クラフトビール醸造家・丹羽智「前編:バーレーワインと野生酵母」

<クラフトビールライフ>ビール醸造家・丹羽智「旅の途中」 ~ 前編:バーレーワインと野生酵母 ~

プロフェッショナルなビール醸造家のキャリアやビールづくりへの思いにスポットを当てる企画「クラフトビールライフ」。第1回は、20年以上にわたりクラフトビールという世界の最前線で走り続ける丹羽智(にわ・とし)さんの“旅”を、前後編の2回に分けてお伝えします。

クラフトビール醸造家・丹羽智「後編:ブルワーとして生きること」

 


Outsiderから「次」の旅へ

 

2012年に山梨県甲府市の中心街で産声をあげたビール醸造所「Outsider Brewingアウトサイダーブルーイング)」。その立ち上げから7年にわたって同醸造所を引っ張ってきたのが醸造家の丹羽智さんです。

博石館ブルワリー世嬉の一酒造(いわて蔵ビール)での活躍を経て、Outsider Brewingでは“ビールの総選挙”とも言える「Beer-1グランプリ」で3連覇を果たすなど、またたく間に全国有数の醸造所を育て上げた丹羽さん。その丹羽さんが、2018年12月末をもって同醸造所を離れ、新たな“旅”をはじめることになりました。

そこで今回は、「醸造家・丹羽智」のビールにかける思いやブルワーとしての生きざま、さらには丹羽さんを象徴する、バーレーワイン野生酵母を使ったビールについて、前後編に分けて詳しくご紹介したいと思います。

前編では、「Beer-1グランプリ」3連覇を記念して、2018年6月末に同醸造所のブルーパブ「Hops And Herbs」にて開催された、丹羽さんの講演レポートをお届けします。

 

ブルワー人生 ~講演レポートVol.1~

バーレーワインとスモークエール

「Beer-1グランプリ2015」で総合優勝した「バンディット スコティッシュスモークエール」(左)、「同2017」と「同2018」で総合優勝した「ピットブルバーレイワイン」(右)[2016年は開催せず]

 

「Beer-1グランプリ」3連覇!

丹羽智氏(以下、敬称略):このたび、おかげさまでOutsider Brewingが「ピットブルバーレイワイン」で「Beer-1グランプリ」3連覇を達成致しました(会場拍手)。これも皆さまのおかげと思いまして、普段は皆さまの前で何かお話をする機会もあまりないんですが、今日は今まで20年ほどビールに関わってきたなか、私自身がどんなことをしてきたかというお話を面白おかしくできたらと思います。

まあ、難しい話にせず楽しくお話ししたいと思いますが、まず私の醸造歴を簡単にご紹介させてください。ビールづくりは今年で21年目になります。1997年に岐阜県中津川市の博石館ブルワリー(現在は醸造終了)でスタートして、そちらに13年在籍してから「いわて蔵ビール」(世嬉の一酒造)、そして現在のOutsider Brewingと、全国を渡り歩いてビールづくりをしています。

突如沸いた「地ビールづくり」の話

岐阜では、まったくのど素人という状態でビールづくりをはじめました。運営母体の博石館は石材の加工や販売を行う石屋さんで、実は私自身もそれまで石の加工や輸入をしていたんですね。そんな会社で、あるとき突如ふって沸いたのが「地ビールづくり」という話です。1994年、ビール醸造に関する法律が改正され、それまで年間2000kl以上つくらないとビールづくりの許可は降りなかったんですが、その最低醸造料が改正後は60kl以上になりました。

それをうけて、まずは新潟のエチゴビールが地ビールづくりをはじめていて、博石館ブルワリーもそのあと1997年にはじめました。博石館という会社は「石のテーマパーク」という施設をつくっていたんですね。鉱物の展示館があったりするようなところで、バブルの時代につくられた、どちらかというとバブリーな設備というかテーマパークです。そんなところにビール醸造所をつくったわけですが、当時は何も分からない状態で、イギリスから導入した2000リットルのタンクでビールづくりをはじめました。

2000リットルの仕込みですと、アルコール度数が5%前後なら麦芽は400~430kg前後を使います。当時はそんな発酵タンク18基に加えてブライトビアタンクもあるという、少しイカれたような規模でして(会場笑)。クレイジーですよね。まあ、バブリーな時代だったので、会社としては「大きいことはいいことだ」と(笑)。とにかくタンクをたくさん入れたら売上もあがるんじゃないかといった発想でした。

そんな環境でビールづくりをはじめて、最初は何も分からなかったんですが、それでも2~3年もやってると醸造の流れもだいたい分かってくるんですね。それでしばらくは、ラガー、ゴールデンエール、ペールエール、スモークエールの4種をつくっていました。でも、「この4種だけつくっていても、なんだか二番煎じ、三番煎じのままだなぁ」と。いつまで経っても“前”に躍り出ることはできないんじゃないかっていう感覚がありました。

超ド級ストロングビールの誕生

そこで、誰もつくったことがないようなビールをつくろう、と。それがバーレーワイン()です。アルコール度数14~15%ぐらいのものをつくろうと考えました。ただ、そう思い付いたのはいいんですが、当時は誰もつくり方が分からない(笑)。海外ではアメリカのサミュエル・アダムズなんかが17%のビールなんていうのをつくっていたし、ほかにも13%や14%のビールはありました。でも、日本国内ではつくった人はいなかったので、誰もつくり方が分からなかったんですね。

※編集部注:ビアスタイル(ビールの種類)の呼称。アルコール度数の高さなどから“ワイン”という名はついていますが、あくまでビールの1つです。

ちょっと難しい話になって恐縮ですが、通常のビール酵母では10%前後までしかアルコール度数が高まりません。10%以上に高めようと思うと清酒酵母やワイン酵母が必要になります。ですから、私はワイン酵母を使うことにしました。

で、「これならうまくいくんじゃないか?」という、そういう浅はかな考えでつくってみたんですが、当時の私はワイン酵母の特性をよく知らなかったんですね。麦芽から取り出した糖分のおよそ半分はマルトースという二糖類です。ビール酵母はそのマルトースを食べることができますが、ワイン酵母は食べることができません。ですから酵素でマルトースを分解しなければいけないという話になります。

でも、そこで私は何も考えず、最初にワイン酵母を入れました。それでも最初のうちはマルトース以外の糖をワイン酵母が食べるものですから、どんどん発酵していくわけです。だから「よし、うまくいった」なんて思っていたんですが、4~5日経つと半分ぐらいまで進んだ発酵が止まってしまった。当然ですよね、残ってる糖はマルトースだけだから。それが食べられなくて、もうどうにもならず、発酵不良で捨てなければいけなくなりました。

クラフトビールの最前線へ踊り出る

でも、それで終わっちゃいけない。2回目は何とか成功させたいと思い、ワイン酵母がマルトースを食べられないなら、最初はビール酵母で発酵させることにしました。それで、「ある程度発酵が進んだところでワイン酵母に切り替えればいいんじゃないか?」と考えて、途中でワインの酵母を投入して発酵させたら、2回目にしてやっとうまくいきました。アルコール度数も14.3%ぐらいにまで高めることができたんです。

結局、誰もやったことがない領域のビールづくりですから、誰に聞いても方法は分からないわけですね。来る日も来る日も自分で考えて、自分なりのやり方でつくるしかない。それでつくることはできたんですが、やっぱり当時は相当な生みの苦しみを感じました。

ただ、当時はおかげさまで「日本で初めてアルコール度数の高いビールができた」ということで、新聞はじめマスコミにもずいぶん取りあげていただきました。それで東京の両国にある「POPEYE(ポパイ)」というビアバーでもバーレーワインを取り扱っていただけるようになったんです。当時は「POPEYE」でビール扱ってもらうことがステータスのような時代で、私としても「なんとか扱ってもらいたい」という思いをずっと持っていまして。

そんなこんなで、なんとなく“後ろ”ほうから“前”のほうへ、やっとの思いで少しずつ出てくることができるようになった次第です。当時、そのバーレーワインの価格は330ml瓶で1本1800円。普通の地ビールは500円前後なのに(笑)。ちょっとクレイジーな価格でしたね。

空気中から酵母を採取

それで、バーレーワインの次も「また誰もやったことがないことをやろう」ということで、今度はワイルドイースト(野生酵母)でビールをつくろうと考えました。なので、ベルギーのカンティヨン醸造所ですとか、海外もあちこちを巡ってワイルドイーストによるビールづくりを見てきた結果、「日本でもできるんじゃないか?」と私は感じたんですね。

元々、ビールというのは100年少し前まで野生酵母による自然発酵でずっとつくられてきたものですし、当然、日本でもできるだろう、と。そう思って取り組んではみたんですが、欧米と違って湿度が高くてカビが多い日本では、これがすごく難しかった。

まずは空気中から酵母を取り込んで自然発酵させるということで、麦汁を入れた大きな金魚鉢を外へ出しておいて、それを翌日朝に取り込み、インキュベーター(恒温器)で温めて発酵させる実験をしてみました。でも、この方法だとカビのほうが先に生えてしまってなかなかうまくいかない。それで何度も繰り返すハメにはなりましたが、ある2月の寒い日、風が強くて晴れた朝に採取した酵母がうまく育ってくれて、自然発酵でビールをつくることができました。

このワイルドイーストによるビールづくりというのも非常に難しかった。今は花から採取したりしたワイルドイーストを純粋培養して、それでビールをつくっているブルワリーさんもいらっしゃいます。でも、私は純粋培養はせず、できるだけ自然な形で、まったく分離培養しないベルギービールのようなやり方でつくりたいと思っていましたから。

岩手ではバレルエイジドも

さて、そのあとは13年在籍した岐阜のブルワリーから岩手県の「いわて蔵ビール」に移り、ビールづくりを続けることになりました。皆さんご存知かと思いますが、日本酒の蔵元・世嬉の一酒造です。あちらは冬場がすごく辛かった。雪はたくさん降るし、冬はマイナス15℃ぐらいになります。朝は雪かきをしてから仕事をするという日々で、運転しようと思っても車のドアが凍って開かないとか、一番寒いときは住んでいたアパートのドアが凍って開かないとか。そういうところで2年間生活していました。

もう冬は本当に寒くて辛くて。家に帰って晩酌っていったってビールなんて寒くて飲めませんから、まずは熱燗をカパっと飲んでから夕飯の支度をするなんていう生活です。ある日なんて、コンプレッサーをいくら動かしても圧縮空気が出ないから、「おかしいな」なんて思ってたらチューブ内に溜まった水分が凍っちゃっていたとか(笑)。

まあ、そんななかでもバーレーワインはつくっていました。お隣宮城の仙台にニッカの工場があるんですけれども、当時はそこで使ってたウイスキーの樽も使ったりしていました。ウイスキーの樽は「チャーリング」といって内側を焼くんですが、焼き直してもらった木樽にバーレイワインを入れて熟成させるんですね。焼いた樽にバーレーワインを入れると非常に甘いバニラのような香りが付いて、味わいも一層芳醇になります。焼き直したウイスキーの樽を手に入れるのはなかなか難しいですし、いい経験をさせてもらったと思います。

そして、そのあとOutsider Brewingに参ったという流れになります。こちらでは500リットルのタンクで、現在は発酵タンクが8基とブライトビアタンクが6基。年間醸造能力は60kl弱です。6万リットル弱ですね。ブルーハウス(仕込み設備)はカナダ製ですが、発酵タンクは中国製にしました。ただただ安いということで(会場笑)。

 

野生酵母の奮闘 ~講演レポートVol.2~

Outsider Brewing

 

比較的新しい現在のビール醸造手法

で、難しい話ばかりしても仕方がないのでこの辺はざっと聞き流していただければと思いますが、お酒というのは酵母でアルコール発酵をさせるわけですね。ビールの場合は麦芽からつくった糖分を酵母が食べることで二酸化炭素とアルコールが生まれます。アルコール度数が5~6%ぐらいなら、だいたい1か月ぐらいでできます。でも、バーレーワインは発酵自体に2週間ほどかかって、そこからさらに熟成に1年ほどかけます。通常のビールと比べて10倍以上の時間をかけるわけです。それぐらいしっかりと時間をかけると、やっぱり熟成した芳醇な味わいが生まれます。

ビールというのは昔は自然発酵でつくられていて、なぜ発酵してアルコールができるかということ自体は分かっていませんでした。それが百数十年前、ルイ・パスツールの研究で酵母による発酵ということが分かり、そこから純粋培養の技術が生まれ、その技術によって今は1年を通して安定的にビールづくりができるようになりました。また、昔は冷蔵設備等もなかったので冬場にビールをつくって夏場に出したりしていましたが、今は設備も進化しました。1年中タンクも冷やせるし、冷蔵庫でビールの保管もできる時代です。

つまり、何千年も前の紀元前から続いているビールづくりの歴史にあって、今みたいに安定的な生産できるようになったのは本当にここ百数十年ぐらいなんですね。ですから、これからもまだまだ面白いビールができるんじゃないかと思っています。

発酵タンクに電気毛布を巻く(!?)

ちなみに、先ほどお話しした通り、自然発酵でスターターになる最初の酵母というのは、外に出しておいた麦汁入りの水槽を翌日に恒温器で温めたものです。そこで発酵がスタートすると、小さな泡が少しずつ出てきて、そのあと発酵がどんどん進んでくわけですね。そうして水槽一面が白い泡のようなものに覆われた状態になるんですが、そこで発酵しているときの香りなんかを確認して、酵母がうまく使えるかどうかを判断します。

失敗することもあります。産膜酵母といいまして、白い膜が張ったような状態になると自然発酵は失敗。漬物の桶なんかに白い膜が張っているようなところを皆さんも見たことがあると思います。あれが産膜酵母ですね。すごく嫌な香りが出て、ダメになってしまいます。

また、通常のビールはエール系だと21~22℃ぐらい、ラガー系だと12~15℃ぐらいで発酵させますが、自然発酵は28℃以上でないと発酵できません。それより下がると一気に発酵が止まってしまいます。だから私は30℃ぐらいの設定で発酵させています。だから冬場は温度が下がらないよう、タンクの下で電気ストーブを焚いたり、タンクのてっぺんから電気毛布を巻いてタンク全体を温めたり。そんな風に温度管理をしないと自然発酵はできないので、すごく手間暇がかかります。誰もこんなやり方ではやりたくないですよね(笑)。こんなやり方でやってるのは私ぐらいだと思います。

自然発酵の酵母というのは、空気中に浮遊しているものもあれば、花粉に付いているものもあります。簡単に採取できるものと言えば果物。リンゴやブドウのような果実ですとか、甘いものに取り付く性質があるんですね。たとえばカブトムシが舐めるようなクヌギの樹液にも必ず酵母がいます。ハチミツの中にもたくさんいます。実際、そういうものでもビールをつくろうと思えばつくることができるんですね。昔の人は、それで果物から自然に発酵したお酒を飲んでいたりもしました。

アケビや干し柿にも酵母が

私が今まで酵母を採取してきたなかで、簡単にかつ高確率で自然発酵に成功したのはアケビです。アケビって果物の部分が最初は閉じているんですが、熟れてくるとパカンと割れて真っ二つに開きます。その中の白い実の部分に甘い蜜が豊富に含まれていて、アケビが割れたときにそこへ酵母がたくさん取り付きます。これが非常にうまく発酵してくれる酵母なんですね。種を含んだ細長い実の部分を、そのまま麦汁のなかに入れてあげると発酵します。

あとは干し柿も。冬場に干し柿を吊るしておくと表面に白い粉状の糖分が付きますよね。冬場は風に乗った飛んできた酵母が、そこに取り付きます。なので、干し柿の皮を剥いで発酵させると、これもかなり簡単に発酵させることができます。

干し芋も同じです。田舎でよく吊るしてあるのを見かけたりしますが、寒い冬空の下に蒸したサツマイモを干しておくと、甘みが凝縮されておいしい干し芋ができます。この干し芋の表面にも白い粉状の糖分が付きますから、そこへビールの酵母が取り付くんですね。その干し芋をそのまま麦汁の中に入れると、簡単に発酵してくれます。なかなか面白いです。もちろん、はちみつの中にも酵母がたくさんいますから、そういったものからも酵母を採取してこれまで自然発酵のビールをつくってきました。

ビールの歴史というのはパンづくりとともにスタートしたと言われています。パンのデンプンが雨に濡れて、そこに自然の酵母が取り付いてビールができたわけですね。そんな風にしてスタートした歴史を経て、今は簡単においしいビールが飲める時代になった。これからは私よりもっと面白いブルワーが出てきて、どんどん面白いビールをつくってくれるんじゃないかと思います。そんなことも期待しつつ、皆さんとまた乾杯したいと思います。今日はどうもありがとうございました(会場拍手)。

 


ビールづくりで大切なこと ~講演レポートVol.3~

Outsider Brewing

 

日本中で活躍する教え子たち

会場:お弟子さんがたくさんいると伺っていますが、育成に力を入れているんですか?

丹羽:冬場対策として有料で研修生を受け入れていました。1~2ヶ月受け入れて、それでビールづくりのイロハから教えていたんですね。ただ、やっぱり教えるほうとしては1~2ヶ月の研修期間が終わればすべて終わりというわけにもいかない。彼らがそれぞれビールづくりをスタートしてからも、設備のことから何から、もう四六時中朝から晩まで電話とメールが来て、それに対応しなくちゃいけない(笑)。もう、それが辛くて辛くて(会場笑)。で、最近は「研修生がこれ以上増えたらもうどうにもならないな」と。それで今はちょっと受け入れをお休みしてる状態です。

ただ、たしかにしっかり教える人がいないといいビールはできないですし、新しくビールづくりをスタートしようという人たちに教えることって大切だと思うんですよね。まあ、教えるほうも精神的にもタフじゃないといけないんですが(笑)、今は皆さん、それなりに安定したビールづくりをしているようなので安心してるところです。

会場:今まで何人ぐらいに教えていたんですか?

丹羽:北海道から九州まで、20数名になります。海外の方も2人いました。青森にあるBe Easy Brewing(ビーイージーブルーイング)のギャレスさんという人もそうです。彼は変わっていて、もともとアメリカ軍の兵隊さんだったんですね。戦場で爆弾処理をやっていたという人で、日本の三沢基地に戻ってきて、そのあと自分でもホームブルーイングをやっていたそうです。それでブルワリーを立ちあげたいということでうちへ来た。彼は三味線を弾くんですよ。ここへ来たときも津軽三味線を持参して(会場笑)、昼休みに弾いたりしてました。津軽三味線のすごく激しいフレーズが好きだったみたいで、趣味だったけど居酒屋で三味線を弾いてお金をいただいたりしていたみたいです。彼はビールづくりのセンスが面白くて、いろいろと画期的なことを考えるんですね。この先もちょっと変わった面白いビールをつくってくれると思います。とにかく、いろんな人がいました(笑)。

NE-IPA等、最新スタイルにも次々トライ

会場:博石館ブルワリーで新しいスタイルに挑戦するとき、いろいろあるスタイルのなかからバーレーワインを選んだのはなぜですか?

丹羽:「誰もつくってなかったから、たぶん注目されるんじゃないかな」って(会場笑)、短絡的な考えでした。当時、日本でアルコール度数10%を超えるようなビールは誰もつくっていなかったから。それなら、もう極端に、10%程度じゃなくて15%に近いぐらいのビールをつくれば注目されるんじゃないかなという、そういう考えでやりました。それで1発目は見事に失敗して叱られたという(笑)。

会場:最近の新しいビアスタイルについてはどういう風に見ていますか?

丹羽:今アメリカで流行ってるのはNE-IPA(ニューイングランドIPA)ですが、「その次はサワーエールなんじゃないか?」とか、いろいろ言われていますよね。今はアルコール度数が高くてフルボディのウェストコーストIPAというのも来ていて、実は私も今月末にウェストコーストIPAを出そうと思ってます。アルコール度数は7%でIBUは80ぐらいにして。でも、フルボディで麦芽の甘みを残しているから、IBU80という数字ほどには苦さを感じないんですね。甘みと苦味、それからホップのアロマが相まって、すごく面白い仕上がりになりました。まあ、新しい流行りが何か出てきたりすると、「うーん…、うちでもできるんじゃないか?」って(会場笑)、真似したくなるのが私のクセでして。

会場:新しいビールづくりで試作というのはしないんですか?

丹羽:試作はしません。1発勝負でつくります。基本的に小さなブルワリーですから試作の設備がないですし。まあ、寸胴鍋なんかでやれば試作もできるとは思うんですが、その時間もないですし。今までもほとんど試作したことはないですね。新しいビールはほぼ1発勝負です。今までもすべて、「これとこれを入れて、こんな風にしたら、恐らくいけるだろう」という感じでやってきました。それでも最近は失敗せず(会場笑)、それなりにうまくいってるので大丈夫だと思います。

そのビールは何を伝えるのか

会場:ビールづくりで一番大切にしてることはなんですか?

丹羽:全体のバランスだと思いますね。仕上がったとき、苦味も香りも含めてすべてのバランスが整っていないといけない。そのうえで、お客さんに何を訴えたいか。「このビールは酵母の特殊な香りを楽しんでいただけます」とか、「これは麦芽の甘みや香りが全面に出た、麦芽が主役のビールです」とか。全体のバランスとともに、主役は何かが伝わるような、そういうビールでないと面白くないと思います。

お客さんとしても、たとえば苦味ばっかり闇雲に出したIPAであれば、ただただ「苦いな」で終わっちゃうと思いますし。そうじゃなくて、つくり手が何を訴えたくてつくったかが伝わるようなビール。そのうえでバランスを考えてつくらないと良いものにならないし、飲んでる方も楽しくないと思いますので。

最近はやたらと苦いだけのようなビールにも遭遇しますが、それだと1杯で十分という風に感じちゃうというか。やっぱり1杯飲んで美味しかったからもう1杯飲みたくなるという、そういうビールがいいんだと思います。飲んだあとに余韻が残るような好バランスのビールでないと、お金を払って飲んでるお客さんとしても対価を感じないというか。その意味で、払ってもらった以上に満足していただけるようなものにしたいと、いつも心がけてますね。

取材協力

Outsider Brewingアウトサイダーブルーイング
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公式サイト
Hops And Herbsホップス・アンド・ハーブス
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公式サイト

 

 

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