アサヒGHD、大学生との共創で「責任ある飲酒」学ぶボードゲームを開発!

「CARE & CHEERS(ケアチア)」

アサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)は2026年3月、立教大学や龍谷大学の学生などとの協働により開発した、「責任ある飲酒」を実践的に学ぶことができるというボードゲーム「CARE & CHEERS(ケアチア)」について発表を行いました。

本記事では、都内・墨田区のアサヒGHD本社にて行われた「CARE & CHEERS」発表会の様子をレポートします。

 

コミュニティ内の相互理解が適正飲酒の鍵に

アサヒグループホールディングス ソーシャルインパクト&アフェアーズ部門長 中村威氏

「学生の方々は本当に柔軟。我々社員では思いつけないアイデアや表現を次々出してくれたし、それが今回のゲームを磨いていく経緯を見てきた。学生の皆さまと一緒に開発ができて本当に良かったと思う」と語るアサヒGHD中村氏。

20歳以上を対象にした「CARE & CHEERS」は、飲酒スタイルの異なる多様なキャラクターたちが、飲酒にまつわるさまざまな出来事に遭遇したとき、飲酒トラブルに陥ることを未然に防ぐべく、互いに助け合って進行していくというボードゲーム。プレイヤーが、コミュニティのなかで互いに支え合うことの大切さを、ゲームを通して体験的に理解することを目的としています。

「責任ある飲酒」を重要な経営課題の1つと捉え、未成年飲酒を防ぐ等の「不適切飲酒の低減」や、ノンアルコール・低アルコールの推進といった「新しい飲用機会の創出によるアルコール関連課題の解決」を目指しているというアサヒGHD。自身が「責任ある飲酒」の仕事に携わりはじめた6年前、「この課題は非常に複雑かつ多面的であることが見えてきた」と語るのは、同社ソーシャルインパクト&アフェアーズ部門長を務める中村威(なかむら・たけし)氏です。

仕事、家庭、経済的ストレスや不安、あるいは上司や先輩からのお酒の勧めを断ることで「関係性が悪化するのでは?」と考えてしまうような社会的プレッシャー等々、背景は多岐にわたるという不適切飲酒。そこには個人の承認欲求や帰属意識、思い込みや先入観、さらには習慣や風習といった飲酒文化なども複雑に入り混じっており、「単なる意識の啓発活動だけではなかなか人々の行動を変えることはできないのではないか」(中村氏)と考えたそう。そこで中村氏は、個人の多様な状況をコミュニティのなかで理解し合うことが課題解決の鍵になるとして、「それを体験できるきっかけがつくれないかと考え、今回のボードゲーム開発に取り組んだ」としています。

 

「CARE & CHEERS(ケアチア)」

『アルハラコワイヨウ』『オーダーおしゃくマシーン』『ねむたろう』等々、ゲームに登場するのは、実際にヒアリングした人々が抱えていた、お酒にまつわる困りごとから生まれたキャラクターです。

1年以上におよんだ開発では、まずは社内外のワークショップや体験会を通じて多様な飲酒スタイルや日常の飲用シーンをヒアリング。大学生から社会人まで、さまざまな人に意見を聞きながら、お酒に関わるエピソードや考え方を幅広くゲームに反映させたとのことです。「本当はノンアルが飲みたいけど勧められると断れない」という悩みを抱えた『アルハラコワイヨウ』、周囲の空いたグラスに対してお酌やオーダーすることばかり考えてしまって自身が楽しめない『オーダーおしゃくマシーン』等、ゲームに登場するキャラクターは、実際のヒアリングで集めた人々の声を直接反映させたものだそう。

また、プレイヤーたちがゲーム内で遭遇する、お酒にまつわるさまざまな「イベント」についても、『歓送迎会』『健康診断』、さらには『恋人・パートナーに振られやけ酒』等々、開発に携わった方々が経験してきたというリアルな場面が反映されているとしています。そのうえで、立教大学法学部の薬師丸正二郎ゼミおよび同大学の学生有志、さらには「SUMADORI-BAR SHIBUYA※1)」で働く、「スマドリアンバサー※2)」の資格を持つ学生の方々の協力も得て、カードに記載される表現をできるだけ一般の方々に伝わるようにするなどの工夫や改良を施していった結果、完成したのが今回の「CARE & CHEERS」としています。

これまで開催してきた本ゲームの体験会では、「いろいろな立場の人がいて、その背景を理解しようとする姿勢や気持ちが大切だと思った」「自分とは違うお酒との向き合い方をしている人の立場に立って考えるのがとても楽しかった」等々、とてもポジティブな声が多かったそう。また、龍谷大学政策学部村田和代ゼミの協力でゲームの効果検証も実施。ゲーム前後のアンケートや、ゲーム中のプレイヤーたちによる会話の文字起こしなどを通してゲーム前後の変化を分析したところ、ゲーム後は、周囲または他者の飲酒行動に関する発言やコメントが増えるのも分かったとのこと。互いに配慮し合うことの大切さについて気づきを得るツールとして活用できることが認められたほか、ゲームで飲酒シーンを擬似体験し、適切な介入方法を学び、不適切な飲酒に関する知識を得る効果もあることが確認できたとしています。

アサヒGHDは今後、社内外の研修やイベントで「CARE & CHEERS」を活用していく予定。アサヒビールが企業や大学で実施している適正飲酒のためのセミナー「スマドリセミナー」でも活用していく方針で、知識習得だけでなく、ゲームを一緒に体験してもらうことで、より体系的に課題を理解し、行動変容を促していきたいとしています。

※1:SUMADORI-BAR SHIBUYAは2025年末をもって営業を終了、2026年春に表参道に移転予定
※2:適正飲酒や酒類業界を取り巻く環境に関する知識を習得し、社内試験に合格することで認定される資格制度

 

学生の“リアル”がキャラクターに反映

「CARE & CHEERS(ケアチア)」開発に携わった立教大学法学部3年の城芽衣さん

「CARE & CHEERS(ケアチア)」開発に携わった立教大学の城さん

発表会では、ゲームの開発に携わった大学生の方々も登壇し、制作にあたって意識した点や工夫したポイントなどを発表しました。立教大学の法学部3年の城芽衣(じょう・めい)さんは、同大学法学部の薬師丸ゼミと、本ゲーム開発に関心を持った有志学生らとともに当初から開発に参加。その背景には「大学生になってお酒が身近になったものの、飲み会の場のトラブルにどう対処したら良いか分からないという漠然とした不安もあり、その対処をゲームを通じて学びたい」といった気持ちもあったそうです。

開発では、まずは2024年11月に学生16名で合宿を行い、どんな場面で悩みや困りごとに遭遇するか、そのときはどんな気持ちになるのかを皆で掘り下げて考え、そのなかでヒアリングした1人ひとりのお酒に対する考え方や経験を、ゲームのキャラクターやイベントに反映させていったとのこと。たとえば、ゲームに登場する『ねむたろう』というキャラクターは城さんに似ているのだそう。「友達と集まるのは好きなのですが、お酒を飲むとすぐに眠くなってしまうことがあり、それは自身で分かっているのに皆と同じペースで飲んでしまい、せっかくの楽しい集まりでうとうとしてしまう」(城さん)という悩みがあったとのこと。

 

「CARE & CHEERS(ケアチア)」

アルコール関連の課題に直面し盤面中央の「トラブルゾーン」に進んでしまうと“ドボン”。そうならないよう4人が互いに「介入」と「傾聴」を駆使しながらゲームを進行します。

そうしたお酒にまつわる悩みも含めて学生の“リアル”がキャラクター開発に生かされたという「CARE & CHEERS」。合宿後も、より多様な学生の意見を取り入れるべく、たとえば飲み会が多いサークルに所属している学生や、お酒を全く飲まない学生にもヒアリングを行うなどして、キャラクターやゲームのなかで発生する、お酒にまつわるトラブルなどの『イベント』を考案していったそうです。併せて、遊び方が分かりやすく、かつ学びが得られるよう、ルールを変えながら何度もゲームをして皆で感想を述べ合い、使い勝手を高めるべく思考錯誤しながら改善を重ねていったとしています。

1年以上「CARE & CHEERS」の開発に携わるなか、「以前より飲み会の場で他の人に配慮して、どんな気持ちかを考えることができるようなったのではないかと感じる」という城さん。「たとえば、これまでは飲み会で顔が赤くなってしまっている人がいても、“お酒が得意ではないんだな”と思う程度で、具体的に対処できることは少なかったと思います。しかし、今では体質によるアルコール分解の仕組みやリスクについて知ったうえで、本人の気持ちに配慮しつつ、ノンアルへの切り替えを提案したり、お水を自然と頼んだりすることができるようになったと感じます」と、自身の行動変容について語ってくれました。

 

「とりま水」等々、同世代が使う言葉で表現

「CARE & CHEERS(ケアチア)」開発に携わったスマドリアンバサダー、跡見学園女子大学4年の芹ケ野真帆さん

「CARE & CHEERS(ケアチア)」開発に携わったスマドリアンバサダー、跡見学園女子大学の芹ケ野さん

一方、「SUMADORI-BAR SHIBUYA」で働きながら「スマドリアンバサダー」の資格も取得していた跡見学園女子大学4年の芹ケ野真帆(せりがの・まほ)さんは、プロトタイプ版の完成後に開発チームの一員となり、ゲームの完成度を高める取り組みをしていったというメンバーです。自身はお酒を飲むのが苦手なタイプだそうですが、「初めてこのゲームを体験したとき、お酒が好きで飲んでいる人にも悩みがあるのだと気づき、多くの人が、こうやって自分とは違う人の気持ちを理解できるようになったら、アルコールハラスメントなどの問題解決にも貢献できるのではないかと思いました」と、開発への思いなどを語りました。

 

お酒は苦手ながら、飲み会の場でお酒を飲まないことにブレッシャーを感じる『エアサーファー』のキャラクター。盤面では課題の深刻度「2」に応じて2マス進んだ場所からスタートします。

そのうえで、共感できるものが多かったというプロトタイプ版のキャラクターや「イベント」について、若者にとってさらに親しみやすいものにすべく、立教大学の学生とともにゲーム中の言葉遣いの改善等に取り組んでいったとのこと。たとえば、キャラクターが飲酒トラブルに陥らないように水を飲むよう促す『介入』の場面を表すカードの1つには、芹ケ野さんらが普段飲み会で使っている「はい水、とりま水」というセリフを加えていったりしたそう。あるいは、大きいサイズのジョッキを全員分注文するという困った行動をするカードでは、「とりあえず全員ジョッキで」という風に、こちらも学生の飲み会でよく使われる表現にしていったとしています。

そうした若い世代らしい言葉遣いや視点がゲーム内容に反映されたことで、「私たちと同じ世代の人たちがゲームをする際、普段自分が参加している飲み会の場面を思い出しやすくなるのではないか」と考えたという芹ケ野さん。スマドリアンバサダーとして適正飲酒セミナーの講師を務めることもありますが、セミナーでは一方的に説明する機会が多いという点に課題に感じていたとのこと。そうしたなか、「CARE & CHEERS」は、「ゲームを通じてお酒を飲む人も飲まない人も、楽しみながら互いを理解できるツールにできたのではないかと思います」と、開発の成果を語ってくれました。

 

4人で協力し「介入&傾聴」でクリアを目指す

「CARE & CHEERS(ケアチア)」

「自分とは違う人の気持ちを理解する」という目的もあり、それぞれ自分と逆のタイプ=色を選択して、そのなかからキャラクターを選んでもらうこともゲームのポイント。

説明会ではゲームの実演も行われました。4人でプレイする「CARE & CHEERS」は、まずは「飲み会が好きでお酒も好き」というタイプの赤、「お酒は好きだけど小人数またはしっぽり1人で飲みたい」というタイプの黄色、「お酒はちょっと苦手だけど飲み会に行くのは好き」というタイプの緑、そして「お酒も飲み会もちょっと苦手」というタイプの青から、4人がそれぞれタイプを選び、さらにそのなかからキャラクターを選んでゲームがスタートします。

このゲームで大切なのは「そのキャラクターになりきること」(アサヒGHD中村氏)。そのうえで、各キャラクターが各種『イベント』でアルコール関連の課題に遭遇したとき、どうやって自分以外の人たちを助けるか、それぞれ考えながら進行していきます。助ける方法は大きく2つ。『介入』に加えて、アルコール関連の課題、悩み、不安を抱えてる人たちから悩みを聞くことで気持ちをクリアにしてもらうという『傾聴』も行えるというのが、本ゲームの特徴の1つとなっています。

 

『働きかけ』カードは『介入』『誤った介入』『傾聴』『誤った傾聴』の4種類。たとえば「酔いつぶれた人を気遣ってそっと1人にしてあげた」という『誤った介入』は危険性も高く、3マス進んでしまいます。

そして、4人が協力し合って盤上中央の『トラブルゾーン』にキャラクターが進まないようにしつつ、キャラクターのカード裏面にある“本当の願い”を聞いてもらえると、そのキャラクターはクリア。クリアが5つになるとゲームクリアという流れになります。まずは4人のキャラクターが自身の課題の深刻度に合わせてスタートラインにつき、“親”がイベントカードを引きます。「歓送迎会」というイベントであれば、たとえば「先輩とのお別れ会っていうこともあって、お酒飲みすぎちゃった人もいて、みんな、かなり酔っ払っていたかな」といった自身のエピソードまたは感想を語ってもらう一方、「良い雰囲気でグラスがどんどん空いて、皆が飲み過ぎてしまう」ということで、このカードは全員が1マス、中央に向けて進むことになります。

これに対して、『働きかけ』カードは4種類。『介入』には、飲みすぎた時に仲間に水を飲むよう促したりする適正な『介入』に加えて、『誤った介入』もあります。「酔いつぶれた人を気遣って1人にしてあげた」という、一見正しいように思えても、実際には窒息の危険もあるので放置してはいけない場面で放置してしまったということで、このカードは3マス前進。『傾聴』にも、キャラクターカード裏面に書かれた“本当の願い”を引き出す適切な『傾聴』に加えて、本人は傾聴したつもりでも、実はその人の悩み寄り添えなかっという『誤った傾聴』もあります。このため、5つのキャラクターが盤外に出ることができればゲームクリアとなる一方で、逆に進んでしまって中央の「トラブルゾーン」に陥ってしまうと“ドボン”。そうしたキャラが3つ重なるとゲームオーバーという仕組みになります。

発表会での実演に参加した4人のうち2人は「CARE & CHEERS」初挑戦とのことでしたが、「気づきが多く、楽しく学ぶことができました。あえて自分と違う立場の人を演じるというか、その人に共感することを意識して役選びをすることがポイントなのかなと思います」とのコメントが。また、「皆で協力しながら本音をそれぞれ聞いていくというゲームそのもののが楽しく感じられました。また、どの人がどんな悩みや願望を持つか、自分では気づけなかった範囲まで知ることができたし、“そういう状態の人に、どう働きかけたらいいんだろう”という部分まで考える機会になって、楽しくもあり学べるゲームだったと思います」といった感想もあり、他者への関わり方や自身の行動変容について、皆が楽しみながらも新しい学びを得ていると感じられるゲームになっていました。

 

 

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山本兼司
この記事を書いた人
山本兼司
■「Always Love Beer(オールウェイズ・ラブ・ビール)」代表
記者として工業専門誌で2年、編集ライターとしてライフスタイル雑誌で3年勤務したのち、フリーランスへ。2016年6月に当サイトを立ち上げ、企画、編集、取材ライティング、撮影、デザイン、コーディング等を担当。2021年5月に合同会社しおりワークスを立ち上げ、代表に就任。
HP:https://www.shioriworks.com/