相性最強!蜂蜜×パンのアップサイクルビール誕生

吉岡専務と市川社長

老舗ベーカリーが営むアップサイクルブルワリー、Better life with upcycle(株式会社栄屋製パン/神奈川県海老名市)は、2025年11月13日(木)にクラフトビール「Honey & Bread」を発売しました。
国産蜂蜜の老舗、 蜂蜜専門店ミールミィ (株式会社金市商店/京都市中京区)と協業し、食パンの耳蜂蜜の検体という2つのフードロス素材を原料に使ったアップサイクルビールです。

本記事では、池袋のビアバー Craft Beer-T(クラフトビアート) で発売日に行われたメディア向け発表会と試飲会の様子も紹介します。


食パンの耳を多種多様なビールに

株式会社栄屋製パン専務取締役/Better life with upcycleブランド代表の吉岡謙一氏

株式会社栄屋製パンの専務取締役であり、Better life with upcycleのブランド代表でもある吉岡謙一氏。

そもそも、創業100年を超える神奈川の老舗・栄屋製パンがビールづくりを始めたのは、毎日大量に切り落とされる食パンの耳をなんとか活用したいと考えたため。栄屋製パンではサンドイッチ用のパンを多く製造するため、切り落とすパンの耳は1日になんと2tトラック1台分(300〜500kg)、重量比ではパン全体の40%に及ぶといいます。
パンの耳は畜産飼料として再利用されてはいるものの、「商品化はただつくって並べるだけではなく、お客様に届いて何かを感じてもらって初めて完結する」との思いから、アップサイクルしてお客様に届ける道を探っていたと専務取締役の吉岡謙一氏は語ります。

切り落とされた食パンの耳

切り落とされた食パンの耳。米食の歴史からか日本では柔らかいパンが好まれ、サンドイッチ用食パンの固い耳は廃棄対象になりがちです。

あるとき、イギリスにパンの耳を使ったビールがあることを知って衝撃を受け、ビールづくりに踏み出すことに。
パンの耳を下処理してモルトと共に煮込み、麦汁を生成する工程を基本とし、製造委託の形で2022年6月にBetter life with upcycle酒販事業をスタート。2024年2月には自社醸造所を海老名市内に設立しました。
3種ほどの定番商品の他、シーズナルビールを月1種程度のペースで自社製造し、これまでに約40種ものアップサイクルビールを手掛けてきたそうです。

アップサイクルハニーを二度投入

蜂蜜専門店ミールミィ(金市商店)代表取締役社長/ハニーハンターの市川拓三郎氏

蜂蜜専門店ミールミィ(株式会社金市商店)代表取締役社長の市川拓三郎氏。ハニーハンターとして日本のみならず世界中を巡り蜂蜜を買い付けているそうです。

京都の老舗蜂蜜専門店ミールミィとの出会いは、名古屋での食品展示会でのこと。ミールミィ代表取締役社長の市川拓三郎氏は、廃棄していた蜂蜜の検体を混ぜ合わせて加工向けに再利用しようと取り組んでいる最中で、アップサイクルの観点から吉岡氏とすぐに意気投合したそうです。
「蜂蜜は年数が経つと風味が落ちてきますが、いろいろな蜜源、地域、採蜜年に採れた蜂蜜をブレンドすることで、むしろより深みやコクが出ます」と市川氏はアップサイクルハニーの魅力を語ります。

アップサイクルハニーを作る様子

蜂蜜には高い殺菌作用があり、腐らないと昔から言われていますが、品質確認用の検品サンプルとして保管する検体蜂蜜は、社内ルールとして3年で廃棄していたそうです。今ではそれらを混ぜ合わせ、濾過してアップサイクルハニーとして商品化しています。

蜂蜜専門店として、他社に先駆けて蜂蜜酒(ミード)の輸入・自社醸造販売も行ってきたミールミィですが、アップサイクルハニーをクラフトビールの原料に使う試みは今回が初めてということです。
「ここまで蜂蜜をたっぷり使うビールは他にないのでは」と言うように、1缶(350ml)に使用する蜂蜜は約18g、原材料の約18% を占めます。
アップサイクル品は素材の味をしっかり出すのが難しいとも言われる中、蜂蜜の味の魅力を感じられるビールにしたいと、蜂蜜を二段階に分けて投入しています。発酵前半では酵母の餌として、後半の完成直前には蜂蜜の風味を付加する目的で加えているそうです。

「Honey & Bread」の味わい

Honey&Breadビールとおつまみのラスク

完成した「Honey & Bread」を口に含むと優しい甘さが広がりますが、これはほぼ蜂蜜由来のもの。モルト由来のカラメルのような香ばしさも加わり、ビールらしさを感じる複雑ながらバランスのとれた味わいに。濃いめの色味でも、見た目ほど苦味や癖はなく、飲みやすいビールに仕上がっています。
香りは爽やかな印象で、トップノートにはベルジャンイーストのフルーティーさ、そしてシングルホップのポラリスによる青りんごやミントのアロマが感じられます。
「パンと蜂蜜を掛け合わせたら絶対に美味しいビールになる」という発想からつくられた、ハニーエールスタイルのクラフトビール。製品イメージが明確だったため、構想からおよそ2ヶ月で製品化に至ったといいます。

サスティナブルへの視点

吉岡専務と市川社長

吉岡氏は「製品として出す以上、美味しさは当たり前」と、環境配慮の側面をあくまで二次的な位置付けとしながらも、「どの産業にも使われずに終わる素材は存在しますが、そこは生産側の考え方次第。ただ消えていくためにつくられるものなどあるはずがないと思う。それを証明したい」と、ビールを超えた分野にも広がるサスティナブルな社会づくりへの意欲をのぞかせていました。

一方、市川氏は、アップサイクルハニーの取り組みにより年間約56kgの蜂蜜ロス削減に成功したことを報告。ミツバチ1匹が一生に集められる蜂蜜はティースプーン約1杯分なので、これは1万匹以上のミツバチが生涯で集める蜂蜜量に相当します。
「今回のようにアップサイクルの新商品が出るのはとても喜ばしいこと」と、自然と密接に関わる養蜂側の立場から循環型社会の実現を目指す姿勢を示しました。


「Honey & Bread」概要

商品名
Honey & Bread
スタイル
Belgian-Style Honey Ale
品目
発泡酒
内容量
アルミ缶入り350ml
原材料
麦芽(ドイツ製)、蜂蜜、パン(小麦)、ホップ/炭酸ガス (麦芽使用料50%以上)
アルコール度数
5.0%
直販EC販売価格
627円(税込/送料別)
販売開始日
2025年11月13日(木)
販売場所
直販ECサイト:https://upcycle-beer.com
蜂蜜専門店ミールミィ(京都府中京区/三条本店)
「クラフトビール×アート」CRAFT BEER-T (東京都豊島区)、三河屋(CIAL横浜ANNEX店、ViNA GARDENS PERCH店)など
better life with upcycle × miel mie
(取材・文:柏崎真弓)

 

 

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