「誰も想像しないことをやろう」 アサヒ空想開発局のこだわりとは

アサヒビールは2026年3月、都内・墨田区のアサヒグループ本社にて、さまざまな新しいアイディアを商品として具現化し、期間限定・数量限定でテスト販売を行うテストマーケティングサイト「アサヒ空想開発局(以下、空想開発局)」の取り組みを紹介する発表会を行いました。
発売後数時間で完売した「EGA BEER」
「EGA BEER」では、中身は同じながらベースカラーが異なる3種の「多種多色缶」を同じラインでランダムに流すという初の試みも行われ、ラインでは印字検査機等もすべて通るよう特別な調整を行いつつ、「最後は全部目検査をして出すみたいな、超荒業で」(寺門氏)製造を進めたそう。
アサヒビールは2025年9月、タレントの江頭2:50さんと共同開発したビール「アサヒ EGA BEER(以下、EGA BEER)」を発売。江頭2:50さんとのコラボレーションというビールファンの想像を超える企画はSNSでバズを起こし、商品は発売後5時間(※)で完売したほか、本商品の開発オファーから完成までをレポートしたYouTube動画5本の再生回数は2026年3月時点で計529万回に達するなど、大変な反響を呼びました。そんな「EGA BEER」を仕掛けたのが、2025年3月にアサヒビール社内で立ち上げられた空想開発局です。
※ 4種のデザインのうち、赤・黒・白色の3種
「EGA BEER」以外にも、唐辛子のハラペーニョを使用したビール「アサヒスパイスビール(以下、スパイスビール)」や、常温時は缶体が無地のように見え、冷却時のみデザインが浮き出るビール「アサヒ シンプルラベル(以下、シンプルラベル)」等、ユニークな商品を次々と世に送り出している空想開発局。その意義について、「一番はテストマーケティングです。当社代表の松山(一雄氏:アサヒビール代表取締役社長)も“大きく失敗するのを避けたい”と言っている通り、(失敗するにしても)小さく、賢く、早く失敗すること」と語るのは、アサヒビール 空想開発局の開発局長を務める寺門誠(てらかど・まこと)氏です。
ドームデビューからライブハウスへ
「ここから全国展開商品が生まれるのも良いですが、会員数が増えたり、お客様の評価がすごく高かったりすればハッピー。とにかく空想開発局を楽しい場所にしたいです。夢は“空想開発局が好きでアサヒビールに入った”という新入社員が出ること。まだ一人もいないそうですが(笑)」(寺門氏)
「これまで、アサヒビールの商品は、いわば“ドームデビュー”が多かった」という寺門氏。装置産業の面があるビールは、なかなか小さな規模でつくれないこともあり、広告投資ありきで最初から全国デビューというケースが多かったそう。しかし、「我々は“ドームデビューをやめよう”と。まずは熱量の高い状態でライブハウスからデビューして、そこでお客様がしっかり応援してくださるような商品だと分かったら、次はアリーナでやったりする」(寺門氏)というのが、同社テストマーケティングサイトの位置づけとしています。
それまでもアサヒビールは空想開発局の前身となるテスト販売サイト「ASAHI Happy Project(以下、Happy Project)」で、「アサヒ ヨルビール」「アサヒ ホワイトビール」等、さまざまな新商品のテスト販売を実施していました。現在全国販売されている「未来のレモンサワー」「ザ・ビタリスト」もHappy Projectから全国へ展開していった商品であり、社内では「今のままでも良いのでは?」との声はあったそう。しかし、実際にはHappy Projectへのサイト来訪者数の増加も長らく停滞しており、常に来訪してくれる数千人のビールマニアやクラフトビールファンによる“箱庭”状態に留まっていたとのこと。「ファンの皆さまに来ていただけること自体はとてもありがたいのですが、量販ではそうしたお客様とだけ向き合うわけでもありません。テストマーケはドームデビュー時と同じ顧客構成であることが大切」ということで、一度“ガラガラポン”でサイトをつくり直そうという結論になったのが2024年のことだったそうです。
各部門からクセ強メンバーが集結
「スパイスビール」のほか、Happy Projectではコーヒーを配合した「ヨルビール」等の開発も担当した、空想開発局チャレンジラボリーダーの河口莉子(かわぐち・りこ)氏。これまでにないゴシックフォントを使った社名ロゴや白ビール等のスタイルに挑戦した結果、「従来のセンターロゴ」や「ピルスナー的なスタイル」等々、むしろアサヒの“らしさ”がクリアになるケースもあったそう。
そのうえで、お酒好き以外の方々にも来訪してもらい、かつ19~22時頃までのコアタイム以外の、お酒を飲まない時間帯でも顧客との接点があるようなサイトを目指したというアサヒビール。また、商品以外でも楽しみを提供するという、新サイトの「ありたい姿」を規定したうえで、その姿を実現すべく、社内から「エッジが効いた、かなりクセ強なメンバーが集まりました。平均値が誰もいない。研究部門、コミュニケーションデザイン部、あるいは旧サイトからの人材も入ってきて、それぞれ各部門との兼務という形で曲者ぞろいのPJチーム」(寺門氏)が誕生。喧々諤々の議論を経て、「好きだから空想する、好きだからカタチにする~」というステートメントや、アサヒ空想開発局というサイト名が決まっていったとしています。
そうして誕生した空想開発局が解決を目指した課題は3つ。まずはHappy Projectで停滞していたサイト来訪者数を伸ばし、かつビールマニアに限らない多様な顧客を獲得すべく、「顧客の想像を超える楽しさ・驚きを提供するような、コラボ開発やグッズ販売」を目指すことに。「“コクのあるビール”とか、“香りの豊かなビール”とか、そういうのは、おそらく想像の範囲内。そうでなく『EGA BEER』のように誰も想像しないことをやろうと考えました」(寺門氏)ということで、「ファンタジーラボ」を規定。また、Happy Projectでは1回購入してそのまま終わってしまうケースが多かったため、リピート購入者を増やすべく「チャレンジラボ」も規定。Happy Projectと同じく6本2,310円(送料込み)でテスト販売は行う一方で、好評だった場合は6本1,500円で、長期間かつリーズナブルな価格で販売するシステムにしたほか、発売頻度や種類も増やしたとしています。
4商品連続で完売。下期は増産へ
ゴミ捨てのときに同じ空き缶ばかりだと恥ずかしいという声に対して「ラベルを消してしまえ」との発想で生まれた、常温時に無地となるシンプルな缶体デザインは、シングルモルト&シングルホップで製造する、いわゆる“SMaSH”をやりたいという別のアイディアと重なり「シンプルラベル」として結実。
そうして2025年4月のスタート以来、「チャレンジラボ」からは前述の「スパイスビール」「シンプルラベル」に加え、「アクアリー」「水レモンハイ」と、「どれも普通に開発していては絶対出てこないような」(寺門氏)4商品が発売されました。「スーパードライも辛口とは言いますが、香辛料を使った“本当の辛口”をつくるバカがいるのか、と。実際、もともとは研究所の担当者が『ちょっと唐辛子入れたら美味しかったんですけど』と言っていたぐらいの発想だったんです。でも、そこで僕らが『それを価値化したらどうなるか』ということを話し合って、シーズが生まれていった。『シンプルラベル』もそうです。たとえば『クリアアサヒ』の空き缶ばかり入った袋をゴミ捨て場に持っていくと、“好きだなー”みたいに思われて恥ずかしい、と。そんな声を実際に聞いていました」(寺門氏)。そこで、飲み終わって常温に戻るとラベルが消える缶体を商品化するというアイディアが生まれたとしています。
そうした「チャレンジラボ」の取り組みによって現在は新規購入者数が大幅に増加。そのうえで、Happy Projectの時代は「ザ・ビタリスト」の完売が社内でもニュースになるほどだったそうですが、「チャレンジラボ」では4商品連続で完売しており、「やっぱり、とんでもなく面白いものをやり続けるのが大事なんだな、と。今までは少し真面目にやってきましたが、ちょっとした遊び心が追加されるだけで、これほど伸長した」(寺門氏)とのこと。今は完売が当たり前になってきて、むしろ物量が1週間と持たないような状態になっているため、2026年下期以降は増産を計画しているとのことです。
Q:なぜエガちゃん? A:好きだから
「想」の字の一部が吹き出しになっているメインロゴに対し、「EGA BEER」は江頭2:50さんの逆立ち姿、「スパイスビール」は唐辛子等々、実は商品発売の都度、「こんなことをしたって誰も見てないんじゃないかという謎のこだわり(笑)」(寺門氏)として、空想開発局のロゴも毎回デザインを変えているそう。
そして、多様な新規ユーザーの獲得を目指す「ファンタジーラボ」から登場したのが「EGA BEER」です。「『なんでエガちゃんなの?』とよく言われますが、ひとつは私が好きだから。好きだからカタチにするというコンセプトなので、たとえばYouTuberとのコラボについても、登録者数等を基準にコラボパートナーを考えるのではなくて、自分が一番好きな方と組むことを考えて企画を出しました」という寺門氏。社内からは「マジでやるの? 事故大丈夫?」等々、大変な騒ぎになったそうですが、それでも突っ走ったとのこと。
その結果として大反響を呼んだことについては松山社長も喜んでいたそうで、「(社長には)“アサヒビールは懐が深いんだってところを見せたいよな”って、ずっと言われていたから嬉しかったですね。当時は発売後すぐにサイバー攻撃がはじまって、正直それどころじゃなかった面もありましたが、それでも大変な思いで実現させた商品をなんとか届けることができた。サイバー攻撃中は、なにかこう…、闇の中だったんですが、SNSでお客様の『おいしい!』『届けてくれてありがとう!』といった感謝の声を見たりして、報われたというか、救われたというか、霧が晴れたような」と、発売時の心境を語ってくれました。
「エガちゃんというフックで途轍もない数のお客様に来ていただいて、サーバーがパンク状態になりつつ、1ヶ月分の物量を用意したつもりが5時間で完売しました。サーバーがパンクいていなければ2~3時間で売り切れていたと思います」という「EGA BEER」。それまでも会員者数は増えていたそうですが、同商品の発売で激増。現在は会員の8割ほどが“エガちゃんファン”とのことで、「それほどファンタジーラボのインパクトが大きかったし、『EGA BEER』を出してからは一般の皆さまにも、“アサヒの空想、、、なんだっけ? あの面白いところ”なんて言われることが増えて」と、認知率向上にも大きく寄与したとしています。
次回コラボも驚きの大物2名が登場?
近年お土産やインテリアとしても人気という小コップに着目し、名クリエイター10名による描きおろしデザインの小コップを数量限定販売して話題を呼んだ2025年12月の企画「小コップコレクション」も、2026年12月に再び開催する予定としています。
2026年も空想開発局はさまざまな展開を行う予定とのこと。「チャレンジラボ」からは、昨年のサイバー攻撃によるシステム障害で発売が遅れていた「シンプルラベル」と「水レモンハイ」が、それぞれ1月と2月に発売されたほか、ノンアルコール飲料製造時の脱アル工程で生成されるアルコールを商品化したというスピリッツ「アサヒ ブルースピリット」も発売し、こちらも完売になったとのこと。また、3月以降も発売を予定している商品があり、こちらも「かなり変わった商品になる」(寺門氏)とのこと。このほか、8月と11月に向けても、それぞれ新商品を開発中としています。
一方で、今後開発していくビールのフレーバーについては、Happy Project時代に発売した「ヨルビール」や「ホワイトビール」等での経験も踏まえつつ、「いわゆるクラフト的なスタイルより、アサヒビールはピルスナー系のものがしっくりくるんだろうなと感じています」(寺門氏)とのこと。「今後クラフト的なスタイルをやらないという意味ではないです。ただ、やはりストライクゾーンがあって、遊び球にも程があるというか、うちが求められている“外角低めギリギリのストライクゾーン”に入れるような距離感が大事だと思っているんですね。真ん中を狙えというわけではなくて、外してもいいけれど、ストライクゾーンに入れておくことが大事かな、と。そのゾーンが具体的にどこなのかというのは悩み中ですが。で、逆に言うと、クラフトブルワリーさんはストライクゾーンに入れてしまうと『つまらない』と言われてしまったりするような宿命があって、その辺がジレンマになっているのかなと思いますけれども」と語ってくれました。
さらに、江頭2:50さんに続く新たなコラボレーションも進行しており、「現在はシークレットだが、8月には『え、そっちに行くの?』みたいなコラボレーションを企画しています。で、そこで安心してると、さらにまた10月には『え、今度は何? そっち?』と。エガちゃんの後はまた芸人かな?とか思いきや、そうでなく、幅を感じさせる大物のお二方が控えています」とのこと。さらに、昨年12月に著名クリエイター10名による描きおろしデザインの小コップを数量限定販売して話題になった企画「小コップコレクション」も、2026年12月に再び実施する予定としています。
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