ヤッホーブルーイングが酒場向け防災ガイドラインと電子メガホン発表

ヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)は2025年12月、飲酒者向け防災啓発プロジェクト「お酒好きのための防災プロジェクト by よなよなエール」を立ち上げ、第一弾として「酒場のための地震防災ガイドライン」をWeb公開し、防災用電子メガホン「キコエール」のコンセプトモデル開発を発表しました。
本記事では、2025年12月4日(木)に同社が新宿で行ったプレス向け発表会と、公式ビアレストランYONA YONA BEER WORKS 新宿東口店で実施した酒場従事者向け防災セミナーについてレポートします。
酒場での災害は想定が薄い
クラフトビールの製造販売だけでなく、ビールイベントなどのエンターテインメント事業にも力を入れてきたヤッホーブルーイング。社員が”ビールまわりでまだ目を向けられていないことはないか”を常日頃から考え、自由に意見を述べ合う社風がある中で、「酒場で酔っているときに災害が起きてしまったら?」というふとした疑問がプロジェクトのきっかけとなったそうです。
事前調査では、日常的に飲食店でお酒を飲む全国の20代〜60代男女300名のうち、65.3%が「飲食店でお酒を飲んでいる最中に災害が起きることを想像したことがない・あまりない」と回答。また約半数が、「飲食店で酔っているときに適切な防災行動ができない可能性」や、「店員の声に気づかない可能性」を感じていることが判明しました。
一方、酒類を提供する飲食店のオーナーまたは店長200名への調査では、72.5%が「防災マニュアルを用意していない(用意していない・以前はあった)」と回答。酔っている客への声かけについては、「指示に従ってくれない」「伝わらない」、そもそも「適切な声がけや避難誘導がわからない」といった難しさを感じていることがわかりました。
酒場のための地震防災ガイドラインを公開
「酒場のための地震防災ガイドライン」の監修を行った、合同会社ソナエルワークス代表、備え・防災アドバイザー/BCP策定アドバイザーの高荷智也氏。「ビールメーカーが飲酒時の防災について踏み込むことは社会的に大変意義がある」と発言。
そこで、プロジェクトの第一弾として「酒場における安全確保の声かけ」をテーマに掲げ、「酒場のための地震防災ガイドライン」を策定。北海道文教大学當瀬規嗣教授や、備え・防災/BCP策定アドバイザー 高荷智也氏へのヒアリングと自社調査によりまとめたもので、WEB上で公開し(https://yonayonaale.com/bousai/)、 2,432通りの中から自店舗にあわせたガイドラインを作成できる仕組みとなっています。
ガイドライン作成に取り組んでもらうことで、自店舗の耐震性を確認し、重ねるハザードマップで店舗の立地状況を調べて災害時に屋外に客を誘導するべきかを事前に知っておくことができます。さらに避難経路を含めた店舗環境や設備状況、外国人客の有無といった顧客特性も考慮することで、店舗に応じた注意点が導き出されます。
ガイドラインは100%の安全を保証するものではありませんが、災害時にどんな対応ができるかを事前に考えるきっかけとして活用してほしいという狙いがあります。
防災用電子メガホン「キコエール」を開発
防災用電子メガホン「キコエール」のコンセプトモデル。平時は店内に馴染むランタンとして使用可能。明かりの部分はビールグラスをイメージしている。
さらに同社は、安全確保の声かけをしっかり届けることを目的に、防災用電子メガホン「キコエール」のコンセプトモデルを日本音響研究所・ノボル電機・quantumと共同開発しました。このメガホンのボタン押して発声すると、通常より大きな声になるだけでなく3,500ヘルツ~5,000ヘルツの周波数成分を有する高い声に変換されるため、騒音の多い酒場でも声が伝わりやすくなるのが特徴です。
日本音響研究所所長の鈴木創氏は、「酒場での声は大きく高くすれば聞こえやすくなりますが、高く変換しすぎても内容が聞き取りにくくなります。”ランダムな4文字の言葉を発声して聞き取ってもらえるか”といった酒場での実験を繰り返し、男性は1.30倍、女性は1.25倍の倍率の声が最適、という実証段階としての結論に至るまでが一番苦労しました」と開発の過程を振り返りました。
有限会社日本音響研究所所長の鈴木創氏。声紋鑑定・音響分析の専門家で、犯罪捜査から商品開発まで活躍の幅は広く、2002年には「バウリンガル」でイグノーベル平和賞を受賞。
変換された声を聞いてみると、いわゆるヘリウムガスを吸って出す声を思わせるような甲高さがあり、「確かに全然違う」「よく聞き取れる」といった感想がデモンストレーションの際に聞かれました。
今回発表した「キコエール」は技術や未来の可能性を探る位置づけで、耐久性や耐火性、防水性といった実用面は考慮しておらず、現時点での販売は予定していないとのこと。ただし「キコエール」を実際に体験してもらいたいと、飲食店向けに防災セミナー兼体験会を実施し、2026年1月中旬頃からは貸し出しも行うといいます。
公式ビアレストランで防災体験会
上の動画は、自社店舗での体験会において、参加者の麦酒大学代表・山本祥三氏が「キコエール」を試した場面です。動画前半が山本氏の通常の声で、動画後半が高く変換された声です。騒音を再現した環境において、「かがんで、頭を守って」という指示が後半ではより聞こえやすくなっています。
これまでのメガホンは、例えば学校で先生の声が聞こえると皆が従う、というように”誰が話しているか”が大事であると想定されており、声質を変える開発は避けられてきたようです。しかし酒場のような環境では、誰が話すかよりも内容がしっかり聞こえることの方が大事です。
体験会では、女性参加者が緊迫感を帯びた大きな声でメガホンを使う場面もあり、参加者たちはすぐに指示に従いテーブルの下に隠れていました。パニックを起こさないよう安心させることも重要ですが、必要な行動を直ちに取ってもらうために短く断定的な言葉で明確に伝えることも大切、といった声かけのコツが紹介されました。
参加者たちはそれぞれが働く店舗での状況を思い浮かべながら防災ガイドラインの作成にも挑戦し、「細かい状況を考えるいい機会になった」「メガホンをぜひ借りてみたい」などの感想を述べていました。

「お酒好きのための防災プロジェクト」について
- ヤッホーブルーイング 「お酒好きのための防災PROJECT」
- 特設サイト(酒場のための地震防災ガイドライン作成可):https://yonayonaale.com/bousai/
- 『「盛り上がる忘年会シーズンに、もしも地震がきたら?」飲食店スタッフ向け防災セミナー』
- 会場:公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」新宿東口店
日時:12月9日(火)11:00~12:00
セミナー応募フォーム:https://jp.surveymonkey.com/r/S8SVKJF
応募締め切り:12月8日(月)昼12:00
各回:20名(先着順)
参加料金:無料(ビール3杯+軽食)
- 飲食店向けメガホン「キコエール」貸し出し(1月中旬頃から予定)
- 受付フォーム:https://jp.surveymonkey.com/r/NX83BSJ
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