ビール&スマドリ強化で“反転成長”へ。アサヒが2026年事業戦略を発表

アサヒビール2026年事業方針説明会

アサヒビールは2026年2月下旬、都内で2026年の事業方針説明会を開催しました。昨年のサイバー攻撃によるシステム障害からの復旧・復興・再始動を経て、同社は2026年に“反転成長”を実現すべくビールの強化と「スマートドリンキング(以下、スマドリ)」の進化を目指すとしています。

 

サイバー攻撃前より強いアサヒビールに

アサヒビール2026年事業方針説明会

2025年9月29日に発生したサイバー攻撃によるシステム障害からのリカバリーについて、「失ったものを取り戻すだけでなく、逆境をバネに、サイバー攻撃を受ける前より強いアサヒビールなろう、と社内では話している。コロナ禍で受けた、特に業務用の壊滅的ダメージから戻る歳もボリューム経営から“Value経営”に舵を切った。今回も同様に、サイバー攻撃からの復旧・復興・再始動を経て、“反転成長”を遂げたい」と、冒頭で決意を語ったのは、アサヒビール代表取締役社長の松山一雄(まつやま・かずお)氏です。

同社の2025年実績を振り返ると、1-9月はRTDが前年比119%、ノンアルコールが同112%と好調だったほか、ビール類計も同98%で前年超えを狙っていたものの、サイバー攻撃によるシステム障害発生後の10-12月はRTDが同51%にまで落ち込むなど大幅な売上減となり、通期ではノンアルを除く全カテゴリーで前年を下回ったとのこと。一方で、「アサヒスーパードライ(以下、スーパードライ)」を中心に、10-12月も「とにかくビールは切らさない」との方針もあり、ビール類計は前年比90%、2026年1月が同89%に踏みとどまっており、松山氏は「まだ復活できていないSKUもあるが、売上構成比は9割方再開した。まだまだ道半ばだが、復興のフェーズが終わる3月から4月にかけてSKU売上比は99%前後まで戻したい。新陳代謝もあるので100%を目指すのでなく、より強いSKUを戻していく」と、今年の方針を語りました。

 

2026年ビール類は前年比一桁台半ばを目指す

「アサヒスーパードライ」「アサヒスーパードライ 冷涼辛口」

「アサヒスーパードライ」(写真中央左)と「アサヒスーパードライ冷涼辛口」(写真中央右)

そのうえで2026年は、全体の定量目標はまだ検討中としつつ、まずはビールに集中し、ビール類は前年比一桁台半ば、スーパードライは同一桁台前半に伸ばすことを一丁目一番地の目標にしているとのこと。1月に物流システムの正常化がほぼ完了し、現在は出荷再開と取り扱い店舗数の回復を急ピッチで進めている段階であり、今後は3-4月に攻めのマーケティングを再開。4月以降は“反転成長”のフェーズとして、短期的にはビールに集中する一方、中長期は「とはいえビールだけをやっていくのでなく、9,000万人+αにおよぶ日本の“大人消費者”すべてに価値を提案するビジネスを展開したい」(松山氏)としています。

ビールの戦略投資について、これまでは年に1度、春に大きな経営資源を投入してきというアサヒビールですが、今年は年3回の山場をつくる方針で、春の第1弾ではスーパードライの「冷え」を強化するほか、大型新商品を投入予定。その後、夏の第2弾では最盛期に合わせて「冷え」をさらに強く打ち出しながら、従来以上の大規模マーケを投入し、10月の第3弾では酒税法改正に向けてスーパードライを刷新する予定としています。“日本の消費財No.1ブランド”(※1)であるスーパードライの強みは、消費者との圧倒的なタッチポイントにあるというアサヒビール。発売以来、スーパードライは1杯350ml換算で累計約1,600億杯、現在は年間で約29億杯飲まれており、松山氏は「その年間約29億回のタッチポイントで心から『うまい!』と言っていただけるよう、今後もValue経営を展開していく」と語りました。

※1:アサヒビール調べ 2025年1月~12月 販売金額
対象商品:アルコール・飲料・食品・化粧品・家庭用品(ヘアケア含む)

 

スマドリは2030年時点で75%超の認知率に

アサヒビール2026年事業方針説明会

アサヒビール代表取締役社長 松山一雄(まつやま・かずお)氏

一方、同社は中長期ではスマドリにも注力していく方針。5年前の年初会見で当時マーケティング本部長だったという松山氏が「スマドリ宣言」を行ってから5年。スマドリにカテゴライズされる売上は2020年の約590億円から2024年は1.6倍の約930億円にまで成長し、認知率はゼロから50%にまで高まったとのこと。今後は2030年時点で売上2,000億円以上、認知率は「クールビズ」に匹敵する75%以上を目指すとのこと。そのために同社は今年、第1の軸であるアルコール、第2の軸であるアルコール代替としてのノンアル・微アルに加えて、第3の軸として“大人味の嗜好飲料”に挑戦していくとしています。

「日本の大人消費者9,000万人のうち、飲ま(め)ない方は5,000万人。普段お酒を召しあがらないのであれば、代替としてのノンアルにも心は動かない。そうした方々に、しっかり価値をご提供するために“大人味”というものを定義した」と語る松山氏。「子どもの頃はおいしいと思わなかった苦み、酸味、渋みといったクセのある複雑で深みある味は、大人になる過程で経験や情報の積み重ねが掛け算され、あるとき“おいしさ”に変わる。その部分を大人味(大人テイスト)と定義して、大人テイスト嗜好飲料というカテゴリーの創造にチャレンジしていく」(松山氏)としています。ただし、そうした「大人テイスト飲料」もスマドリと同様、1-2年でなんとかなるものではなく、同社としては5年10年かけてやっていくとのこと。「まず今年は首都圏でテスト販売を行い、2027-28年にかけカテゴリーを確立すべく全国展開を進めたのち、2029年にはラインナップを強化・拡大していきたい」(松山氏)と、今後のロードマップも示されました。

 

国内唯一の「スーパードライ」コンセプトショップ誕生

アサヒビール2026年事業方針説明会

続いて登壇した同社常務執行役員 マーケティング本部長の古澤毅(ふるさわ・たけし)氏からは、ビール強化とスマドリ進化に関する詳細な戦略が語られました。ビール強化の一丁目一番地はスーパードライの強化と位置づけるアサヒビールは、昨年から本商品について3ヶ年のロードマップを掲げており、その初年度となる2025年は「キンキンDRY」の取り組みを立ち上げ、年間約29億杯(回)の接点で「キンキンDRY」を訴求。昨年スタートした「SUPER COLD認定店」も目標超えの5,000店を達成したとのこと。そうした取り組みの結果、現在は「キンキンに冷えたときに、特においしそうなビールは?」という純粋想起率の調査(※2)でも、スーパードライという回答が増えており、他社製品とも大きな差をつけて想起されるようになるなど、大きな成果を挙げているとしています。

そして、ロードマップ2年目となる2026年は“体験促進期”と位置づけ、新たな体験の場として国内唯一の常設型コンセプトショップ「BEER DINER SUPER DRY TOKYO」を3月2日(月)にOPENする予定。品質、注ぎ方、温度(冷え)に徹底的にこだわり、本店舗を「キンキンに冷えた“辛口のうまさ”とブランドの世界観を発信する拠点にしていく」(古澤氏)とのこと。また、商品面では、冷涼感を生み出すホップを一部使用した「スーパードライ 冷涼辛口(以下、冷涼辛口)」を、夏場最盛期に向けて5月12日と7月中旬の2回発売予定。同社は年間を通してスーパードライのブランド力強化を図っており、「冷涼辛口」以外にもいくつかの新商品を投入するほか、10月にはスーパードライ本体の刷新でビール市場活性化に取り組むとしています。

※2:アサヒビール調べ

 

再始動の象徴へ。麦芽100%ビールが新発売

アサヒビール2026年事業方針説明会

2026年4月14日(火)発売予定の「アサヒ ゴールド」(写真中央)

このほか、アサヒビールは再始動の象徴として、4月14日(火)に大型新商品「アサヒ ゴールド」も発売予定としています。麦芽100%で同社通常ビールの1.5倍におよぶ麦芽を使用したという本商品は、ビール本来のうまさ、麦のうまみをしっかり味わえる一方で、「麦芽100%にすると味が重たくなったり渋みや雑味が出がちだが、当社の技術力を駆使して、またスーパードライと同じ酵母を使用することで、雑味のないすっきりした後味を実現した」(古澤氏)としています。

「さまざまな顧客評価にもかけているが、一言で表現すると、“飲み進めていくごとに満足感が上がるビール”と考えている」という古澤氏。顧客にブランドを提示せず本商品を3本送り、1周間のうちに飲んで、それぞれ飲用後の満足度を評価してもらうという調査では、「1日より2日目、2日目より3日目と、どんどん満足度が上がることが分かった。しっかりとした味わいがありながら、日常引用にふさわしい味に仕上がっていると考えている」(古澤氏)とのこと。販売目標は633ml☓20本換算で400万箱としており、今後、家庭用ビール市場でしっかり存在感のある商品に育成していきたいとしています。

 

スマドリのマーケティング投資は100億規模に

アサヒビール2026年事業方針説明会

アサヒビール 常務執行役員 マーケティング本部長 古澤毅(ふるさわ・たけし)氏

一方のスマドリについては、2020年の「スマドリ宣言」以来、ノンアル・ローアルコール製品の発売、体験拠点「SUMADORI-BAR」の展開、そして吉本興業とのコラボによる新コミュニケーションなどよって着実に認知率を高めてきたほか、昨年は社内で「スマドリアンバサダー制度」を設けて飲酒リテラシー向上も図ってきたというアサヒビール。「現在、スマドリアンバサダーは社内の9割におよぶ、およそ2,800人が取得した。今年も各種商品発売に加え、「SUMADORI-BAR」の移転OPEN等、しっかり進化させていきたい」と、古澤氏は語ります。このほかにも昨年は、既存ブランドでは「アサヒドライゼロ」が10年連続シェア1位(※3)、「アサヒゼロ」もシステム障害があったなかで前年比149%と好調だったほか、“夜専用炭酸”を謳った「ウィルキンソン タンサン タグソバー」のような新たな提案も数々行ってきた結果、スマドリの認知率は過去最高の52%(※4)を獲得しており、大きな成果があった1年だったとしています。

それに続いて2026年も、3月31日(火)に発売するノンアル新商品「アサヒゼロ エールテイスト」をはじめ、毎月のようにさまざまな魅力的商品を出していく方針とのことで、マーケティング投資は本年も約100億円規模で展開する予定。古澤氏は「商品育成と、吉本興業さんとのコラボに代表されるようなスマドリの推進、その両輪でマーケ投資を行いながら、日本の飲酒文化を変えていく取り組みをしていきたい」と、今後の方針を語ってくれました。また、「大人テイスト飲料」については6月に第1弾「ティースパークリング/Tea Sparkling(仮名)」のテスト販売を行う予定。ダージリンを中心とした茶葉の苦みや渋みと、ホワイトグレープ果汁の甘みが織りなす複雑で深みのある味わいが特徴の商品とのことで、今後は大人テイスト飲料についても、本商品を皮切りに飲食店で複数のテスト販売を行っていきたいとしています。

※3:インテージSRI+ノンアルコール飲料市場2016年1月~2025年12月累計販売金額
7業態計(SM・CVS・酒DS・一般酒店・業務用酒店・DRUG・ホームセンター計)
※4:アサヒビール調べ

 

 

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山本兼司
この記事を書いた人
山本兼司
■「Always Love Beer(オールウェイズ・ラブ・ビール)」代表
記者として工業専門誌で2年、編集ライターとしてライフスタイル雑誌で3年勤務したのち、フリーランスへ。2016年6月に当サイトを立ち上げ、企画、編集、取材ライティング、撮影、デザイン、コーディング等を担当。2021年5月に合同会社しおりワークスを立ち上げ、代表に就任。
HP:https://www.shioriworks.com/