東京は地ビール醸造天国? 都道府県別マイクロブルワリー数と2016年クラフトビール業界

2017-10-16

今、日本のクラフトビール・ムーブメントは「第2の隆盛」を迎えていると感じます。

1994年の酒税法改正(※1)に続く設立ラッシュと、その後やってきた市場停滞にともなう淘汰を経て、小規模ビール醸造所(マイクロブルワリー)の数は2014年頃から再び拡大に転じました(※2)。2016年12月現在は国内で270箇所前後にまで増えており、2017年も力強い拡大基調のまま、各地で続々と新しい醸造所が誕生する予定です。

※1 ビール製造免許の取得に必要な年間最低醸造量の規制が2,000KLから60KLに引き下げられた同改正によって、それまで大企業以外には事実上困難だったビール醸造が中小規模の事業者にとっても現実的選択肢になりました。それが、「地ビールブーム」と呼ばれた「第1の隆盛」につながります。

※2 国税庁「酒のしおり(平成28年3月版)」

 

全国1400ヶ所のビアバーやブルワリーを網羅


「ビアバー&ブルワリーマップ」(クリックすると別ウィンドウでマップを表示します)

これに合わせて、ビールイベントの情報等をまとめている当サイトでは、全国で1400ヶ所前後におよぶビアバーやマイクロブルワリーの情報をグーグル・マップ上で監修。先般、その登録作業が一段落しました。

今後も開業や移転などの情報確認にともなってマップは随時更新していきますが、今回の監修はクラフトビールのムーブメントを考えるうえで、何より当サイトにとって貴重な勉強の機会になりました。そこで、今後は日本のクラフトビールをとりまく状況について当サイトが「おもしろいな」と感じたことを、インフォグラフィック的アプローチも交えつつ楽しくまとめていきたいと思います。

 

上位10都道府県で国内全ブルワリーの過半数に

今回はその第1弾として、2016年12月現時点で当サイトが稼働を確認しているマイクロブルワリーの数を、上位10都道府県に絞ってまとめてみました。

都道府県別の比較そのものに大きな意味はありませんし、今も各地で新しいブルワリーが続々と稼働を開始していますから、あくまでもデータは流動的なもの。ムーブメントの一端を直感的に捉えつつ、あとはトリビアとして、ビールを愉しむ時間のちょっとした肴にでもしていただければと思います。

 

むしろ醸造所が多いのは大都市という結果に

さっそくご紹介しますと、まずマイクロブルワリーの数が日本で最も多いエリアは28ヶ所の東京都でした。営業オフィスではなく、醸造所という「ものづくり拠点」で東京が最多というのは意外でしょうか。

実際、一昔前は「地域に新しい観光資源をつくる」「ご当地の水源を使う」といった目的で地方に設立されるブルワリーが多かったこともありますし、地価も高い大都市圏でのブルワリー隆盛はイメージしづらいかもしれません。

ところが、東京に次いで数が多かったのは北海道ともう1地域、横浜という大都市を擁し、人口でも全国2位の神奈川県でした。以下、12ヶ所の静岡県と長野県と兵庫県、10ヶ所の新潟県、8ヶ所の愛知県と大阪府と埼玉県が続きます。上位10都道府県で国内全マイクロブルワリーの過半数を占めていました。

 

「ナノブルワリー」ひしめく首都圏の風景

28ヶ所
東京
19ヶ所
神奈川
19ヶ所
北海道
12ヶ所
静岡
12ヶ所
長野
12ヶ所
兵庫
10ヶ所
新潟
8ヶ所
愛知
8ヶ所
大阪
8ヶ所
埼玉
ブルワリー / BREWERY ビール
デビルクラフト・トーキョー・ブルワリー / DEVIL CRAFT TOKYO BREWERY デビルクラフト
ヴィルゴビール / VIRGO BEER ヴィルゴビール/他
ホッピービバレッジ調布工場 / Hoppy Vivaledge 深大寺ビール/他
羽田ブルワリー / Haneda Brewery 羽田ブルワリー
十条すいけんブルワリー / Suiken Brewery 十条すいけんブルワリー
新宿ビアブルーイング / Shinjuku Beer Brewing 新宿ビアブルーイング
石川酒造 / Ishikawa Brewery 東京地ビール 多摩の恵/他
アサヒクラフトマンシップブルワリー東京 / Asahi Craftsmanship Brewery Tokkyo アサヒクラフトマンシップブルワリー東京
さかづきブルーイング / Sakazuki Brewing さかづきブルーイング
マイスターブロイ目黒醸造所 / MEISTERBRÄU マイスターブロイ
カンピオンエール浅草醸造所 / Campion Ale Asakusa Brewery カンピオンエール
中野ビール工房 / Nakano Beer Kobo 中野ビール工房
高円寺麦酒工房 / Koenji Beer Kobo 高円寺麦酒工房
阿佐谷ビール工房 / Asagaya Beer Kobo 阿佐谷ビール工房
荻窪ビール工房 / Ogikubo Beer Kobo 荻窪ビール工房
西荻ビール工房 / Nishiogi Beer Kobo 西荻ビール工房
高田馬場ビール工房 / Takadanobaba Beer Kobo 高田馬場ビール工房
地ビール 八蛮 銀座店 / Hachiban Ginza 地ビール 八蛮 銀座店
宮多麦酒(ミヤタビール) / Miyata Beer 宮多麦酒(ミヤタビール)
ビアカフェ バテレ / Beer Cafe VERTERE ビアカフェ バテレ
アンカーポイント / Anchor Point アンカーポイント
ファクトリーカミカゼ / Beer FACTORY KAMIKAZE カミカゼビール
ワイワイジーブルワリー・アンド・ビアキッチン / Y.Y.G.Brewery&Beer Kitchen ワイワイジーブルワリー・アンド・ビアキッチン
スプリングバレーブルワリー東京 / SPRING VALLEY BREWERY TOKYO スプリングバレーブルワリー東京
調布ビアワークス / CHŌFU BEER WORKS 調布ビアワークス
ティー・ワイ・ハーバー / T.Y harbor ティー・ワイ・ハーバー
MTクラフトブルワリー / MT Craft Brewery MTクラフトブルワリー
常陸野ブルーイング・ラボ / Hitachino Brewing Lab 常陸野ネストビール
ブルワリー / BREWERY ビール
スラッシュゾーン / THRASH ZONE スラッシュゾーン
横浜ベイブルーイング戸塚工場 / YOKOHAMA BAY BREWING Totsuka Factory 横浜ベイブルーイング
湘南ビール / Shonan Beer 湘南ビール
サンクトガーレンブルワリー / SanktGallen サンクトガーレン
黄金井酒造 / Koganei Brewery さがみビール
厚木ビール / Atsugi Beer 厚木ビール 丹沢のしずく
箱根ビール / Hakone Beer 箱根ビール
ヨロッコビール / Yorocco Beer ヨロッコビール
風上麦酒製造 / Kazakami Beer Seizo 風上麦酒製造
ブリマーブルーイング / BRIMMER BREWING ブリマーブルーイング
ティーティーブリュワリー中島醸造所 / T. T BREWERY ティーティーブリュワリー
クラフトビア・ムーンライト / Craft Beer Moon Light クラフトビア・ムーンライト
横浜ビール醸造所 / Yokohama Brewery 横浜ビール
南横浜ビール研究所 / Minami Yokohama Beer Labo 南横浜ビール研究所
横濱金沢ブリュワリー / Yokohama Kanazawa Brewery 横濱金沢ブリュワリー
フィフティーンブルワリー / 15brewery フィフティーンブルワリー
ワインアンドフーズヨコヤマ / Wine an Foods Yokoyama 足柄地ビール
名越坂ブルワリーハウス / Nagoezaka Brewery House 鎌倉ビール/江の島ビール/葉山ビール/横須賀ビール
バーバリックワークス / BarbaricWorks バーバリックワークス
ブルワリー / BREWERY ビール
玉村本店 / Tamamura Honten 志賀高原ビール
AJB アングロ・ジャパニーズ・ブルーイング / Anglo Japanese Brewing Conpany AJB アングロ・ジャパニーズ・ブルーイング
ヤッホーブルーイング / YO-HO Brewing よなよなエール/軽井沢高原ビール
軽井沢ブルワリー / Karuizawa Brewery THE 軽井沢ビール
ハクバ・ブルーイング・カンパニー / Hakuba Brewing Company ハクバ・ブルーイング・カンパニー
エイワ穂高ブルワリー / Eiwa hotaka beer 穂高ビール(ほたかビール)
南信州ビール駒ケ岳醸造所 / Minami Shinshu Beer Komagatake Brewery 南信州ビール
信州塩尻農業公園 チロルの森 / Tirol no Mori 塩嶺麦酒(えんれいばくしゅ)
白樺リゾート レイクサイドプラザ / Ji Beer Shirakaba/Tateshina 白樺・蓼科地ビール
麗人酒造 / Reijin Shuzo 諏訪浪漫ビール/善光寺浪漫ビール
OH!LA!HO BEER ビール工場 / OH!LA!HO BEER Brewery オラホビール
地ビールレストラン バーリーハウス / Bburghley House 木曽路ビール
ブルワリー / BREWERY ビール
あわぢびーる工房 / Awaji Beer Kobo あわぢびーる
城崎町家地ビールレストラン グビガブ / GUBIGABU 城崎ビール(きのさきビール)
出石城山ガーデン / Izushi Shiroyama Garden 出石城山ビール いずし浪漫(いずししろやまビール)
明石ブルワリー / Akashi Brewery 明石ビール
丹波篠山ジグザグブルワリー / Zigzag Brewery 丹波篠山ジグザグブルワリー
神戸湊ビール / Kobe Minato Beer 神戸湊ビール
六甲ビール醸造所 / Rokko Brewery 六甲ビール
ブリューパブ スターボード / Brew Pub Starboard ブリューパブ スターボード
インザドアブルーイング / In Tha Door Brewing インザドアブルーイング
白雪ブルワリーレストラン 長寿蔵 / Shirayuki Brewery Restaurant Chojukura KONISHIビール
揮八郎ビール / Kihachiro Beer 揮八郎ビール
神戸大使館醸造所 / Sapporo Kobe Taishikan Brewery サッポロ神戸大使館ビール
ブルワリー / BREWERY ビール
山の駅 胎内高原ビール園 / TAINAIKOGEN BEER 胎内高原ビール
瓢湖屋敷の杜ブルワリー / Hyouko Yashiki No Mori Brewery スワンレイクビール
沼垂ビール醸造所 / Nuttari Beer Brewery 沼垂ビール
新潟麦酒 / Niigata Beer 新潟麦酒(にいがたビール)
薪小屋 / Makigoya 薪小屋(まきごや)ビール
エチゴビール / Echigo Beer エチゴビール
日本海夕陽ブルワリー / Nihonkai Yuhi Brewery 日本海夕陽岬ビール
ストレンジブルーイング / Strange Brewing ストレンジブルーイング
妙高高原ビール園タトラ館 / Myoko Kogen Beer 妙高高原ビール
八海山 泉ビール醸造所 / Hakkaisan Izumi Beer Brewery 八海山泉ビール
ブルワリー / BREWERY ビール
箕面ビール / Minoh Beer 箕面ビール
ブリューパブ テタールヴァレ / brewpub TÊTARD VALLÉE ブリューパブ テタールヴァレ
道頓堀麦酒醸造所 / Dotonbori Beer 道頓堀地ビール
寿酒造(ことぶきしゅぞう) / Kotobuki Shuzo 國乃長ビール(くにのちょうビール)
ビアベリーブルーイング / Beer Belly Brewing ビアベリーブルーイング
マルカ カフェアンドビアファクトリー / Marca Cafe & Beer Factory マルカ カフェアンドビアファクトリー
地底旅行 / Titei Ryokou 地底旅行
堺収穫麦酒 / Sakai Harvest Beer 堺収穫麦酒

※ 事業者の皆さまへ:情報の正確性については万全を期しておりますが、万一事実と異なる内容や記載ミスがありました場合は至急修正いたします。大変お手数ではございますが、コンタクト案内よりご一報いただけますと幸いです。

ここで一旦マイクロブルワリーの定義を確認しますが、本集計では「大手5社(アサヒ/オリオン/キリン/サッポロ/サントリー)の工場」と「学術機関等のR&D施設」を除くビール醸造施設としました。また、同じメーカーでも複数施設があれば施設数をカウントしたほか、自社設備を持たない、いわゆる「ファントムブルワリー」は集計から除いています。

一方、ビールファンは酒造免許の種別によって何を飲むか決めるわけではありませんから、ビール製造免許を保有するブルワリーと発泡酒製造免許(年間最低醸造量6KL)だけで運用しているブルワリーは分けずに集計しました。その辺も踏まえると、特にここ数年で誕生した大都市圏のマイクロブルワリーはほとんどが発泡酒免許で運営されていて、かつ飲食店を併設した比較的小規模な「ブルーパブ」形態が多いことも分かります。

これらの施設は既存のマイクロブルワリーと比べても醸造量がさらに一回り少ないケースが多く、「ナノブルワリー」と呼ばれることも。ですから販売数量等の合計では都道府県別でもまったく違う結果になる点には留意が必要です。市場全体では、主に10年以上前から活躍する各地域のブルワリーが主役と言っていいでしょう。

 

米国クラフト文化に通じるブルーパブ“らしさ”

ただ、それを差し引いても消費力が圧倒的に高い首都圏でのブルワリー立ち上げラッシュには大変な勢いがありますし、当サイトが確認しているだけでも今年はさらに5~10ヶ所が首都圏で新たに稼働を開始します。また、最近はクラフトビールファンの多くがブルーパブという言葉から連想する「アメリカ発クラフトカルチャー」の文脈で、オーガニック、サステイナブル、あるいは地域へのコミットといった概念を具体化した店舗が目立ってきました。

こうした店舗は外販比率が低いか、自店での樽生提供だけを前提に醸造を行うケースも多く、ボトリング等の設備や外販/物流にリソースを割くことなく、比較的小さな初期投資で事業を興しています。今はそれをクラウドファンディングのような新しい資金調達手段、あるいは各地で開催されるビールイベントが資金や収益の面で下支えしている、というのが現在のムーブメントにおける興味深いポイントのひとつだと思います。

 

裾野(ブルワリー数)の広がりは、いつか頂上(品質)の高さへ

もちろんブルワリー数は指標のひとつでしかありません。ただ、参入者が増えて“山の裾野”が広がれば、その頂上もゆくゆくは高くなり、一層の質向上や市場拡大につながるという思いがあったので、今回はブルワリー数に着目してみました。

ちなみに、今回は「クラフトビール」「地ビール」という言葉の説明も特にしないまま本題に入りましたが、次回はそうした言葉の捉え方について当サイトが考えていることを書いてみたいと思います(テーマは変わる可能性があります)。読者の皆さまからのご意見や取りあげて欲しいテーマも大募集中です!

それでは!

 

 

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