Hop & Brew Schoolレポート【Vol.2】日本産ホップとサッポロビールの現在地

サッポロビールは2026年8月4日(火)、世界的ホップサプライヤーの米Yakima Chief Hops(ヤキマ・チーフ・ホップス、以下:YCH)主催で日本初開催となったホップの体験的教育プログラム「Hop & Brew School® Satellite: Japan(以下、Hop & Brew School)」にて、日本産ホップの現状や同社の育種・開発に関する取り組みを発表しました。
ホップを横断的に学び、体験するプログラム
YCHが、サッポロビール、そしてビール原材料の輸入・販売などを手掛ける片岡物産との共催により、日本で初めて開催した「Hop & Brew School」では、YCHの事業紹介、生産者によるパネル、先進的ホップ製品の紹介、官能評価・製品選定のワークショップ等、多岐にわたるプログラムが実施されました。
本サイトでは、ほんの一部ではありますが、本プログラムで特に印象に残ったパネルやワークショップを数回に分けて読者の皆さまと共有しします。【Vol.2】の今回は、共催のサッポロビールによる日本ホップ産業の歴史と現状の紹介、そして同社が現在取り組んでいるホップ育種・開発の紹介を報告します。
約150年前に札幌で官営のホップ園を開設
「今回のプログラムが、私たちがどういった思いでホップと向き合ってきたかを知っていただく機会になれば」と語るのは、サッポロビールのパネルで登壇した同社購買部の楯優作(たて・ゆうさく)氏です。
北海道の歴史はサッポロビールの歴史でもあるという楯氏。前身となる1876年の開拓使麦酒醸造所設立から今年で150周年を迎えるというサッポロビールは、1877年には「冷製札幌麦酒」(現在のサッポロラガービール/赤星)を発売したほか、1880年には大麦を、翌1881年にはホップも100%道産化しています。1877年には札幌で官営(≒国営)の「官営葎草園」(ホップ園)を開設し、ホップの研究開発もスタート。1923年には上富良野町でホップの試験栽培もはじめています。サッポロビールは、その歴史を通して原材料の育種・開発にも力を入れ続けており、「信州早生(しんしゅうわせ)」「ソラチエース」「フラノスペシャル」など、これまでにさまざまなホップ品種を開発してきたとしています。
国内生産はピーク時の3,000t超から約1/30に
サッポロビールを含む国産ホップ産業の歴史を遡ってみると、戦後はビール需要の拡大に伴ってホップ生産量が増え続け、ピークとなる1960年代後半には3,000tを超えるホップが生産されていたとのこと。しかし、その後は、より安価な輸入ホップに置き換えられるような形で徐々に生産が縮小し、減反が進んでいった結果、現在の生産量はピーク時のおよそ1/30となる120-130tにまで減少。現在の国内における主要産地は、北海道、青森、岩手、秋田、山形となりますが、他の農作物と同様、少子高齢化や担い手不足等、多くの課題を抱える状況となっています。
一方、グローバルでホップの生産量を見てみると、ドイツの会社のレポートでは2024年時点でおよそ11万3,000トン。うち、ドイツとアメリカで約80%を占めており、そのアメリカで大きなシェアを占めるのがYCHとなります。
ソラチエースはじめ、20種以上のホップを開発
現在、農林水産省に品種登録されている国産ホップは28種類にのぼりますが、うち20種類はサッポロビールが開発したもの。「ソラチエース」「リトルスター」「フラノマジカル」「フラノスペシャル」などがあり、それぞれ、「リトルスター」や「フラノスペシャル」は「サッポロクラシック」に、「フラノマジカル」は「ヱビス クリエイティブブリュー 和奏(わかな)」などの同社ビール製品に使用されています。特に「ソラチエース」はBROOKLYN BREWERY(ブルックリン・ブルワリー)をはじめとする海外のブルワリーに高く評価され、逆輸入のような形で日本でも広まっていった品種とのこと。サッポロビールも2019年に同ホップ100%となる「SORACHI 1984」を発売し、支持を広げています。
なお、28種類というのは品種登録制度がスタートした以降のもの。「農林水産省で品種登録されていない『信州早生』等も、サッポロビールの前身となる大日本麦酒の時代に同社研究者が開発した品種であり、実際には20種以上のホップを開発してきた」(楯氏)としています。
クラフトブルワリー向けに国産ホップ2種を外販
現在もホップ・大麦の育種に加えて契約栽培を行っているというサッポロビール。楯氏によると、自社で大麦とホップの両方を育種し、契約栽培まで行っているビール会社は世界でも稀とのことで、サッポロビールがコアコンピタンスのひとつに掲げる「自然の恵み・素材へのこだわり」の通り、原料から高品質なビールをつくる取り組みにつながっています。
同社は2025年末に国産ホップの外販もスタートしました。現在は自社開発品種の「リトルスター」「信州早生」の2種をクラフトブルワリー向けに販売しており、今後は取り扱い品種をさらに増やしていくことも考えているとのこと。ホップ生産者支援の文脈もあり、このホップ外販で得た利益の一部は「生産奨励金」として生産者に還元していくとしています。
「うどんこ病」に耐性持つホップを開発
このほか、サッポロビールは未来に向けた取り組みとして、気候変動に対応する原料開発を2022年に発表しています。今後は気候変動に適応するための新品種(大麦・ホップ)を2030年までに登録出願、2035年までに国内で実用化したのち、2050年までに、それらの品種のほか、新たな環境適応性品種を開発して国内外での実用化を目指すとしています。
これらの取り組みはすでに成果が出はじめており、今回の「Hop & Brew School」開催の1週間ほど前、2026年7月末には、気候変動に向けて「うどん粉病」に抵抗性を持つホップ「フラノ2004B号」を開発し、品種登録の出願を行ったとの発表が行われました。うどんこ病は20℃前後の温度帯で感染が進行しやすいこと、夜間に感染リスクが高まることなどが示唆されており、今後、温暖化によって夜間の気温が上昇するなどした場合は、「うどんこ病」にとってより好適な気象条件となり、ホップへの被害が増加する恐れがあったとしています。
そうしたうどんこ病に耐性を持った「フラノ2004B号」については2027年の商業栽培開始を予定。楯氏は「まずは数量を増やし、皆さまのもとにお届けできるような仕組みをつくっていきたい。将来的にはサッポロビールの主力ブランドや海外での活用も視野に入れている」と、今後の目標を語りました。
「Hop & Brew School® Satellite: Japan」概要
- イベント名
- Hop & Brew School® Satellite: Japan
- 開催日
- 2026年8月4日(火)
- 開催場所
- YEBISU BREWERY TOKYO
東京都渋谷区恵比寿4丁目20-1 ガーデンプレイス内 - 主催
- Yakima Chief Hops
- 共催
- サッポロビール株式会社、片岡物産株式会社






![健全な葉[左]とうどんこ病に罹患した葉[右]の比較(写真は「フラノ2004B号」ではありません)](https://i0.wp.com/www.alwayslovebeer.com/wp-content/uploads/2026/09/hop-brew-school-tokyo-2026-02-0006.jpg?resize=1500%2C900&ssl=1)
















