黒ラベル&ヱビスの新体験拠点も誕生!サッポロが酒税改正後の事業戦略を発表

サッポロビール「酒税改正に伴うビール&RTD戦略発表会」

サッポロビールは2026年8月26日(水)、都内・恵比寿の本社にて「酒税改正に伴うビール&RTD戦略発表会」を開催し、「サッポロ生ビール黒ラベル(以下、黒ラベル)」を中心とした既存ビールブランドに過去最大級のマーケティング投資を行うなどの事業戦略を発表しました。

 

10月の酒税改正を成長のテコに

サッポロビール「酒税改正に伴うビール&RTD戦略発表会」

今年7月の事業持株会社化を機に理念や戦略体系を改めて定義したというサッポロビール。今後は、「つながりを育み、感情の質を高める顧客体験の創造=‘Bonds with Community’」と「顧客に対する新たな健康的選択肢の提供=‘Healthier Choice’」という2つの戦略軸を両輪に、「多様な生活シーンでサッポログループが選ばれることを目指すことが、新たな経営理念の実現につながると考えている」と話すのは、これまで、mizkan、Coca-Cola、ハルメク、日清食品でマーケティングや経営に携わり、今年7月にサッポロビールの執行役員 マーケティング本部長として着任した中村洋一(なかむら・よういち)氏です。

今年10月の酒税改正を大きな成長機会と捉えているというサッポロビールは、酒税改正後は市場のプレミアム化がさらに進むと見ているとのこと。それに伴って、今後は「単なる高価格という意味での“プレミアム”でなく、このブランドだから飲みたいと思ってもらえる独自価値が必要になっていく」という中村氏。独自価値を生み出す同社のコアコンピタンスは3つ。「歴史・文化・地域の記憶と結びついた街の名を冠するブランド資産」「世界観や体験を届けるという物語性ある体験創出」「北海道における大麦やホップの育種など、品質の源泉となる自然の恵みと素材へのこだわり」という3つの強みを掛け合わせ、単なる商品価値を超えた顧客価値を創造していくことを目指すとしています。

 

缶ビールは2014年比で総需要を大きく上回る成長

サッポロビール 執行役員 マーケティング本部長 中村洋一(なかむら・よういち)氏

サッポロビール 執行役員 マーケティング本部長 中村洋一(なかむら・よういち)氏

「メリハリ商品の定着」や「価値重視型商品へのシフト」がさらに進む今後の市場では、ブランドの世界観や体験価値への期待がますます高まると見ているサッポロビール。酒税改正を経てビール類では狭義ビールの市場構成比が拡大するほか、RTDも増税にはなるものの、手軽さ、価格優位性、多様なニーズへの対応によって市場は引き続き拡大。「これまでお酒にあまり馴染みのなかったお客さまも含めて、新たな需要の広がりが期待されている」(中村氏)としています。

なかでも「ビール回帰の流れは最大の成長機会」(中村氏)。SAPPORO、GINZA、YEBISU等、街の名を冠した個性豊かなブランドを持ち、一貫したブランドコミュニケーションによる情緒的つながりと、リアルな場でのブランド体験による直接的なつながり継続的に育んできた結果、ビールカテゴリ(缶)の同社出荷実績は、2014円比で総需要の1.13倍を大きく上回る1.54倍を達成。中村氏は、「単に商品を売るだけでなく、体験を通じてブランドとつながってもらうという体験と、コミュニティを起点としたマーケティングこそ、酒税改正後の市場で、さらに重要になると考えている」と続けます。

そのうえで、今後の市場変化を成長につなげるべく、ビール事業では「ブランド体験の創出・拡大を通じた購買機会の創出」を目指し、主力ブランドとなる「黒ラベル」「ヱビス」を核に、2026年10-12月にかけて過去最大級のマーケティング投資を実施する方針。「単に認知を高めるだけでなく、ブランドの価値や世界観の体験を通じて選ばれる理由をさらに強化したい」とのこと。併せて、「RTD事業では多様な価値提案を軸とした需要創造を推進して、“濃いめ市場”のさらなる活性化と高付加価値商品の提案を行っていく」と、中村氏は今後のマーケティング方針を語りました。

 

16年間で2.1倍の成長遂げた黒ラベル

サッポロビール「酒税改正に伴うビール&RTD戦略発表会」

続いて登壇したビール&RTD事業部 部長の下和田勇(しもわだ・ゆう)氏からは、酒税改正期間でサッポロビールが取り組んできたマーケティング活動とその成果、そして今後のマーケティングアクションの詳細が語られました。2016年に酒税法改正が発表されて以来、ビール大手4社は狭義ビール強化の方針を掲げてきた点は共通する一方、「サッポロビールは新商品に頼ることなく、150年の歴史のなかで育んできた、個性と物語のある一つひとつの既存ブランドを磨き続ける取り組みを8年間続けてきた」という下和田氏。その結果、2025年のビールカテゴリ(缶)出荷実績は、2018年比で総需要の117%を10ポイント以上も上回る128%と、大きな成果をあげたとしています。

成長の中心は、2010年からの16年間で缶の出荷実績が2.1倍に伸びたという「黒ラベル」。主に成長をドライブしたのは、2010年にスタートしたTVCM「大人エレベーター」シリーズを通して“大人の世界観”を醸成した第1フェーズ、2014年にスタートしたリアル体験イベントを通して若年層を含め間口を拡大させた第2フェーズ、それまで比較的シェアが低かった西日本エリアで営業とマーケティングの両輪をしっかり回し、2015年頃から店舗販売を拡大させた第3フェーズ、そして酒税法改正による新ジャンルからビール回帰の流入を確実に捉え、広告投資の強化でボリューム層を拡大させた第4フェーズ等の取り組みだったとのこと。そのうえで、同社は今年10月に行われる最後の酒税改正を第5フェーズとして、さらなるマーケティングアクションを打っていくとしています。

 

体験による“ファン度”の向上が実績をドライブ

サッポロビール ビール&RTD事業部 部長 下和田勇(しもわだ・ゆう)氏

サッポロビール ビール&RTD事業部 部長 下和田勇(しもわだ・ゆう)氏

ブランド体験によって“ファン度”が向上し、それに伴って顧客の飲用量も増えることを確認しているというサッポロビール。同社は「ヱビス」ブランドでも、2024年にオープンしたYEBISU BREWERY TOKYOがブランド体験・発信拠点として多くの来場者を集めたほか、共鳴・共創を掲げて漫画家の荒木浩彦氏、矢沢あい氏とのコラボデザイン缶も発売するなどして新規の顧客を獲得。YEBISU BREWERY TOKYOに来場したフライトファンの飲用量は約160%に増加するなど、良質なブランド体験をきっかけに、「ヱビスビール」の再購入や飲用量増加につながったとしています。

「赤星」の愛称で親しまれる「サッポロラガービール」も同様です。149年の歴史があり、酒場文化との強固な結びつきを強みに独自のポジショニングを確立しているという同ブランドは、2016年からの10年間で瓶ビール市場が約半分にまで落ち込んだなか、約3.5倍の成長を達成したとのこと。その成長要因も飲食店での体験であり、「瓶ビールを仲間とつぎ合うことで、ブランドとお客さまとのあいだに物語が生まれ、その物語がまた別のお客さまに伝わっていく。赤星は、そんな風にしてお客さまと飲食店に育てていただいたブランドだと考えている」と、下和田氏は語ります。

 

1-7月の狭義ビールは前年比104%と好調

サッポロビール「サッポロ生ビール黒ラベル」「ヱビスビール」

サッポロビールは今年1月から過去最大規模のマーケティング投資を実施。「黒ラベル」では1月から松任谷由実さん、7月から山本由伸さんが「大人エレベーター」に登場したほか、「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR」は大阪で2拠点目がオープン。絶え間ないマーケティングアクションで新しい体験を創出してきたほか、「ヱビス」でも共鳴・共創を軸とした取り組みで新規顧客を獲得し、実績の向上につなげているとしています。

今年1-7月の実績については、新ジャンルを含めたビール類で前年比約4%減、狭義ビールで同約99%と見ているという総需要に対して、サッポロビールは狭義ビールが全容器計で同104%と伸長。ブランド別では、「黒ラベル」が同101%、「ヱビスビール」は同99%ながらプレミアムカテゴリーの総需要を上回ったほか、「サッポロ クラシック」が同102%、「SORACHI1984」が同121%と前年超えを果たしたとのこと。また、「サッポロラガービール」も瓶が同122%と、大幅増を達成したとしています。

一方、RTDの1-7月実績は前年比90%と、数字上はやや苦戦。2025年度に同124%と伸長した反動もあり、主力の「濃いめ」ブランドが前年比約1割減となりましたが、ノンアルコールRTD「濃い絞り」ブランドについては同約130%と、引き続き好調に推移したとしています。

 

銀座ライオンビルに黒ラベル&ヱビスの新体験拠点

サッポロ生ビール黒ラベル BEER AJITO

サッポロ生ビール黒ラベル BEER AJITO

YEBISU BEER HALL TOKYO

YEBISU BEER HALL TOKYO

こうした実績を踏まえ、発表会では酒税改正後のマーケティングアクションに関する説明も行われました。まずビール事業は、体験と広告を軸とする方向性はこれまで通りとしつつ、「黒ラベル」と「ヱビス」の新たな体験拠点「サッポロ生ビール黒ラベル BEER AJITO(以下、BEER AJITO)」と「YEBISU BEER HALL TOKYO」を、都内・銀座7丁目の銀座ライオンビル4階にて、10月27日(火)にオープン予定としています

BEER AJITOは、「大人たちが自分らしくビールを嗜む隠れ家」をコンセプトとした、CLUB黒ラベル会員限定となる31席のクローズドなビアバー。数十種類のグラスと複数の注ぎ分けによる飲用体験で一杯ごとの個性を楽しみながら、自分らしい時間を過ごせるビアバーを目指すとのこと。一方、YEBISU BEER HALL TOKYOは、銀座ライオンビルがある場所で1899年に日本初のビアホール「恵比寿ビヤホール」を開業した「ヱビス」が、その歴史と伝統を受け継ぎながら、現代のライフスタイルに合わせてビアホールを再定義したという店舗です。全93席の店内では、追加料理も楽しめるコース料理とともに、フリーフローで多彩なヱビスブランドが楽しめるほか、ビアホールのライブ感を提供すべくラウンドサービスを実施するとのこと。なお、銀座ライオンビルの5階では、12月にサッポロライオンの新業態も開業予定としています。

このほか、「黒ラベル」は10月に16年ぶりの新コミュニケーションを投入予定。「大人エレベーター」はこれまで通り続ける一方、「そこに接続・拡張するような形で、『大人エレベーター』で醸成した世界観と“生のうまさ”を、実在する飲食店を舞台にお伝えしていく」(下和田氏)とのこと。詳細は9月16日(水)に出演タレントも含めて改めて発表予定としています。また、「ヱビス」も、引き続きブランド体験と情報発信を強化していく方針。本年スタートした、ヱビスの提供価値を極める 「Master of YEBISU」認定制度を通じて外食での提供品質を高めていくほか、10月からは新CMの飲食店編もスタート。これまで掲げてきた「共鳴・共創」に関しても、人気ラーメン店「飯田商店」との共創企画を11月に実施予定としています。

 

「濃いめ」には“超”が。デュワーズのハイボールも登場

「サッポロ 超・濃いめ 無糖」「サッポロ 超・濃いめ」「デュワーズ12年ハイボール」「サッポロ 濃い搾り」

一方、RTD事業では、多様化する生活者ニーズに対応して、「“濃いめ市場”の活性化」と「高付加価値の強化」を進めていくというサッポロビール。まずは、コスパ意識や健康意識に応える形で、「この価格で、この濃さ、このうまさで、これなら満足できる」という選択肢を提供していくとのこと。「お酒に限らず、生活防衛意識が高まると、濃いものの市場が拡大していく傾向にある。同じ価格でより大きな満足感を得られるよう、濃い味を求める傾向は今後も強まっていくと考えている」という下和田氏。現在、「サッポロ 濃いめ」ブランドは“濃いめ市場”において約76%のシェアを占めており(※1)、今後も濃い味わいの価値を拡張すべく、同ブランドは10月に「濃いめ」から「超・濃いめ」へリニューアル予定。コスパ文脈意識のさらなる高まりに応え、“濃いめ市場”のさらなる活性化を目指すとしています。また、「濃い搾り」ブランドは2025年度も前年比170%と大きく拡大。「居酒屋で味わうような手搾り感や、濃いレモン感で、高いとご支持をいただいているのが大きな成長要因と捉えている」(下和田)ということで、10月には期間限定で「カシスオレンジ ノンアルコール」も発売予定としています。

そして、高付加価値強化については、スコッチウイスキーブランド国内売上No.1(※2)の「デュワーズ」から、新たなハイボール製品を11月17日(火)に数量限定で発売予定とのこと。12月の年末最盛期に向けて、「なめらかな味わいと芳醇な香りが特徴の、少し贅沢なハイボールを楽しんでいただきたい」(下和田氏)としています。

※1 サッポロビール調べ(ハイボール除く「濃い」が付く商品群を便宜的に集計した同社独自の整理であり、必ずしも同一の商品特性を有する市場を示すものではない)
※2 インテージSRI+2024年7月~2025年6月スコッチウイスキー販売金額より 7業態計(SM・CVS・HC・DRUG・酒量販店・一般酒販店・業務用酒販店)

 

山本兼司
この記事を書いた人
山本兼司
■「Always Love Beer(オールウェイズ・ラブ・ビール)」代表
記者として工業専門誌で2年、編集ライターとしてライフスタイル雑誌で3年勤務したのち、フリーランスへ。2016年6月に当サイトを立ち上げ、企画、編集、取材ライティング、撮影、デザイン、コーディング等を担当。2021年5月に合同会社しおりワークスを立ち上げ、代表に就任。
HP:https://www.shioriworks.com/